*泥蠍泥
*ハッピーバースデイダラ!




「んー…なんか忘れてるような…」


何だっけな、とうんうん唸っている旦那の横で、お得意の芸術活動に明け暮れるも、こう煩くっちゃ集中できない。いつまでもこのままだと敵わない。ので、一つ小さく溜息を吐いて旦那の悩み解消の為にオイラも手伝ってやろう。
ホラ、旦那。忘れてるっつったらアレしかないだろ。そうそう、アレ。


「何だっけなぁ…アダルトビデオの返却はこの間済ませたろ?傀儡の部品の買い忘れもないし…」


ああ、全く。わざとなのか素なのか、どうにも一向に気付かない。コレはもうアレだな、旦那も呆けたな、うん。そのうち「晩飯は食ったっけか?」とか言い出しても何の驚きもしないだろう。

かといってやっぱり思い出してくれないのは少し頭に来る所がある。つまりアレだ。旦那が忘れてるのはオイラの誕生日だ。それも昨日。今日は五月六日、オイラの誕生日である五日はとうに過ぎている。


「あー…あっ?ああ!思い出した!デイダラ、お前昨日誕生日だったろ!」


…ホラ、やっぱり。


「おせーよ、色々。…ったくよぉ…」


オイラだってもう餓鬼じゃない。旦那よりは若いとはいえど、もう誕生日なんて実質興味がないのだ。とは言っても祝わって貰えればそれはそれで嬉しいし、先日他のメンバーとすれ違い様におめでとうなんて言われていれば、部屋に籠りっ切りの旦那だけには祝って貰えなかったのが少し残念に思ったりも少しはした。

まあ旦那の性格上こんなもんだろう、とは思う。寧ろ今日思い出して貰っただけで奇跡に近しい。
だけど、それでも一応はさ。


「…仮にも恋人なんだから覚えてろよな、うん…」


ハァ、と軽い溜息と共にそう漏らすと、悪かったって、と苦笑交じりに言う。口では謝ってはいるけれど、全然悪びれてない。全く薄情な男である。
「ここは何かやるべきか」と自棄に真面目くさった顔で考えてる事モロ口に出してる旦那を横目で見るや否や苦笑した。そして未だにブツブツと何か呟いて考え事をしている旦那の肩をトン、と押し倒す。


「………オイ」
「何だい?うん」


ふ、と笑って問いかければ、あからさまに眉間に皺を寄せた旦那と目がかち合う。今にもキレ出しそうな旦那の両腕を素早く頭上で一纏めに押さえつけると、古惚けたベッドのスプリングがギシリと鳴いた。
ぐぐぐと懸命に腕に力を入れ押し退けようとしている旦那を薄ら笑いを浮かべてじっと観賞していると仕舞いにはひくひくと頬を釣り上げ始めた。相当怒ってるな、うん。


「オイ、デイダラァ…まさかプレゼントは旦那でいいぜ、何てベタな馬鹿げた事言わねぇよなぁ…」
「へへっ、旦那がそう言うならそれでいいぜ?」
「言ってろ、ボケ」


暴言を吐く旦那に気を取られて油断していると、圧し掛かって抑えていた筈の足で全力の蹴りを綺麗に鳩尾にヒットさせてくれた。全くよくやってくれたもんだ。正直かなり痛い。

その後何を思ったのかぐうの音も出ないオイラをじいっと観察して、ふっといつもの妖しげな嗤いを口元に浮かべたかと思えばぐいと一度離した腕を引っ張られる。思わず体勢を崩すと必然的に旦那に覆い被さる形になるわけで。不覚にも耳元に掛かる旦那の吐息に欲情してしまったのも事実だ。


「…何だよ?旦那、言葉のワリには乗り気じゃねーか、うん」
「…うるせぇよ、いいからとっとと脱げ」


いつもよりも数段積極的な旦那のへったくそなおねだりに思わず笑いが漏れる。遂にはぷっ、と噴き出すとまるで子供のようにむっと口を膨らませ子供らしからぬパンチを一発頬に貰った。
全く可愛くない。この暴力魔め。なんて口では言うが実際は満更でもないと思っている。さてと、そろそろベタであっま甘のプレゼントでも貰うとするか。うん。



祝ってやらない事もない

20110506
デイちゃんはぴば!!


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