*角飛
*死ネタ
*本編の角都、飛段との戦い後辺り





暗くて狭い。感覚なんて最早感じない空間、手も足も動かない。というのも頭部以外が切断されているから当たり前の事だが。
こんな真っ暗で何も無い世界で考える事はたった一つだけだ。いつ、この体が治って、この暗く狭い空間から這い出せるのか。他に考える事なんて無いから、ぼうっとこの繰り返しだ。

全く、今回ばかりは悪かったな、と思う。
角都お決まりの忠告も聞かず快楽を得る為だけの戦闘、いつもと同じでいつも通りのオアソビの時間。正直相手を見縊り過ぎていた。敗因はどう考えてもそこだ。結果的に角都の心臓を一個潰しちまう事になって、足引っ張ってそのまま地面の下にドボン、だ。
全く情けねぇ話だな、オイ。


「ゲハッ…角都、まだかなァ」


声にならない声で一人呟く。随分と水分を補給出来てないせいで喉はカラカラだ。腹は繋がってないからか空腹感はない。


「角都が来たらまず、そうだな、遅ぇよって怒鳴りつけて…そんで…」


来てやっただけでも感謝しろ、なんて言うんだろうな。上手く角都のご機嫌取りをして…体治してもらって。本当は角都、凄く優しい奴だから、ご機嫌取り何かしなくても最終的には俺の面倒を見てくれるんだ。それでも同じ台詞を繰り返すのは、それがお互いの決まり事みたいになっているからで。


「体くっ付いたら団子でも食いにいくかー…あっ、でも角都の事だから金が勿体無いとか言って却下されるか…」


ここから出られたら借りを返すつもりで賞金首狩って来てやるからよ。もう前みたいに顔が解んなくなるまで遊ばねェから。だから早く迎えに来い。


「あーあぁ、角都の奴、遅ぇなァ…」


もういくら待ったかなんて覚えていない。
怒ってんのかなァ、それとも本当に俺の事なんてどうでもいいと思っているのか。…角都に限ってそれはない。根は優しい奴なんだよ、あいつは。きっとその内絶対迎えに…。


「………、」


チカ、と岩の隙間から月の光が差し込む。やっと雲が晴れたんだな、だとかを頭のどこかで考えてみるけれど、どうしてもそんな考えは直に消えてまた角都が来てくれるようにと願うばかりだ。
暗い。痛みはない。でも寂しい。寂しい。早く、早く迎えに来てくれ。このままじゃ、俺。


「何だか眠くなってきちまったぜ…ああ…」


フッと差し込んでいた月光が隠れる。何だ、また雲が掛かっちまったのか。嫌だな、あんな小さな光でもあるのとないのとでは随分違うというのに。
ああ、やっぱりまた俺は薄暗闇に包まれる。


「…暗い、なァ……」


なあ、角都。俺はお前が殺すんだろ?
なあ…だったら早く殺しに来い。いい加減待たせると俺、キレるぞ、オイ。
なあ…角都…俺、お前にもっと、言いたい事…

ふっ、と力なく薄く笑って、瞼を閉じる。すると一筋、雫が目尻を伝って地に落ちた。



終わる愛
(伝える前に終わった、なァ…)


20110501

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