*角飛
*泥蠍泥要素有




「あァっ?デイダラちゃんが…デートォ?!」
「ちょ、ばっか声でけェよっ!」


クラスメイトの中でも比較的仲の良いデイダラちゃんが悔しくも羨ましい自慢を話してきたのが朝、学校に来てすぐの事。
何でも今度の休日に、彼の恋人であるサソリとかいうヤツと出かける約束をしたらしい。サソリの野郎とは一度会った。先日、デイダラちゃんが告白して見事射とめただの何だのと話していた時に、成り行き上紹介してやる、という状況になったのだ。つまる所憎たらしくもまざまざと見せつけてきたのである。
ああ全く、悪意が無いのはわかっているが、やはりどうしても頭にくるものがあるのも事実だ。

かくいう俺にだって、好きな人の一人や二人ぐらいいる。…いや、前言撤回だ。一人、いる。
あまり堪え性のない性格だと自分でも自覚している俺は度重なるアプローチを掛け、それでも上手くあしらうソイツに遂に告白だってした。それでも初めこそはまた軽くあしらわれていたが…まあ、結果から言うと今では交際だって続けられている。
結果オーライ、楽しい恋人ライフがおくれるかと言えば、決してそんな事は夢のまた夢だったのだ。
…と、いうのも立場上仕方の無い事なのだけれど。


「うぁー…角都ゥー…」
「先生を付けろと何度言えばわかる」
「別にいいだろォ?二人っきりなんだからよォ…」


ほんの少し埃臭い社会科準備室。せかせかと次の授業の準備をする角都の邪魔をするようにファイルを纏めている机の上に腰を降ろして声を掛ける。邪魔だどけなどと冷徹極まりない台詞を吐いて、ギロリと此方を睨むものだから肩を竦めて視線を逸らした。仮にも恋人にそういう扱いは如何なものか。

付き合い始めて数カ月。恋人同士と形だけは取り繕ってはみたものの、だからといってその間に何かあったわけでもない。本当に稀に軽いキスこそしてくれるものの、一緒に出かけるなどと云う事は全くと言っていい程無いのだ。

そう考えてじっくり思い出してみる。そうだ、思い返してみればみる程コレといった二人だけの思い出がない。仕事仕事と常に仕事バカの角都は休日も忙しいからと早々一緒になど過ごしてくれない。それでも無理やり押し掛けてみた事もあったが、頑として帰ろうとしない俺に呆れたように溜息を吐いて「そんなに俺を困らせたいのか」だとかそんな事を言われて思わず泣き出しそうになった事さえある。

一度考え始めるとマイナスな思考は止まる事を知らず、もやもやした黒い感情だけが胸の辺りに溜まってしまう。
堪え性が無い事くらいわかってる。
ここでこの気持ちを爆発させたらどんなにスッキリするか、それぐらいもわかる。
でも同時に、このもやもやを吐き出せばこれまで通りに少しでも角都と一緒にいる事など出来なくなってしまうだろう、なんて事も頭のどこかではわかっている筈なのだ。


「…なぁ、角都ー」
「…何だ」


いい加減に邪魔はしてくれるなと疎ましそうに対峙する。ああ、そんな顔してくれるな。泣くぞ、オイ。


「角都よォ…本当に俺の事…好き?」


小首をコクンと傾げ、柔らかく言ったつもりではあった。それでもどうしても言葉に棘があったらしい。みるみるうちに角都の眉間に深い皺が寄って、苛立っているのが手に取るようにわかってしまって。
折角の機会なんだ、ここで引き下がるな、なんて自分に言い聞かせながら。目頭が熱くなっていくのを必死に堪える。


「…角都、いつも俺の事なんて眼中にねーじゃん?…俺の事、…好き?」


生憎そう何度も口にして尋ねられる程の根性は初めから持ち合わせていない。何とか絞り出して言ってみるものの、当の角都はひたすら無言を貫き通してくる。




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