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「お……い、ナッツ!!!馬鹿、目覚ませ!!!」

誠は無我夢中でナッツを仰向けに寝かせて、焦燥で甲高くなった声を張り上げる。辛うじて胸は上下しているが一向に開かないナッツの瞼に、誠の顔はナッツ以上に、さっと青くなった。

(お……おれの……せい……?)

先程自分が彼にかけた言葉が、走馬灯のようにはっきりと甦る。ナッツを現実に呼び覚ます声がぷつりと止んだ。唇は震えて、腹から声を出すのを体が拒否している。誠は今の自分が何をしても、ナッツを傷付けるような、苦しめるような気がした。どこか奥の方で、足をつけて立っていた地が崩れる音がした。

「し……しん……」
「ばーか、これくらいで死なれてたまるか」

誠の上空から気だるい声が降り注ぐ。いつのまにか、誠の隣にはネイティが立っていた。

「ナッツ君、体弱いってほんとだったんだね……」
「ああ。……、」

そして向かいには、ナッツの体を挟んで心配そうに顔を歪めるライチとクレイがしゃがんでいる。その視線の先にはナッツがいて、それのそもそもの原因を考えると、誠は今すぐにでも床に頭を押し付けて謝りたい衝動に駆られた。

「マノが少なくなってるってのは……貧血みたいなもんだ。ただ一回の生産でここまで弱体するのは初めて見たけどな。誰か保健室に運んでやれ」
「おっ、俺がやる!!!……ます!」

しかし、今自分のするべき事ではないと、誠はネイティの指令を聞くやいなや、ナッツの腕を素早く首の後ろに回した。俯いた瞳に映る真紅の床が、じんわりと滲む。よろよろと起き上がれば、もたれかかるナッツの体が、変に軽くなった。

「先生、俺も運びます」
「おう、そうしろ」

姿勢を低くしたクレイが、同じようにナッツを支えていたのだ。誠が面食らっていると、クレイの鋭い眼光と目が合った。

「行こう」

先生の言う「貧血状態」だとしても、クレイの声色は、任務の時と同じくらい真剣味を帯びていた。



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