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「おおっし!!あんな狐の魔物みてーな奴には絶対負けねー!!ほらお前らも手出せ!やるぞ!」

誠はやる気満々と言わんばかりにローブの袖を捲り上げ、素早く手を差し出す。もう片腕はナッツの首の後ろに回され、驚いたナッツは慌てて誠の顔を見た。自分はいいと、一旦辞退しようと思ったのだ。しかし、強い光が宿る誠の目を見てしまっては、後ろ向きな言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。
もしかしたら、もしかすると、頑張れば、出来るかもしれない。可能性はゼロじゃないのかもしれない。
そんな少しの希望を抱かせるのには、十分過ぎる光だった。

「……おうっ!」
「そ、そうだね!僕も……頑張らなくっちゃ……」

ナッツの力強い返事の後に、ライチもぎゅっと拳を握り込む。それらを目にしたクレイとルカは、互いに目配せして意思の疎通を始める。結果的に、出来ないふりだけしておけば良いという事に収まった。

「よし、んじゃあ……火だろ……えーと……」

誠は目を閉じて、差し出した手のひらに意識を集中させる。それに習い、四人共同じように、視界を暗闇に染めた。(クレイとルカは細く開けて三人の観察に入っていたが)

「熱い……燃える……木は炭になる……赤い、水に弱い、ぼーぼー燃える……あと、高温で溶かす……?」

ぶつぶつと誠が独り言を言う脇で、ナッツとライチは彼の呪文を手掛かりに、静かにイメージを膨らませていく。そうして……一人の手の上に、小さな炎が点った。しかし皆目を閉じているため、当の本人とクレイ達以外は気付かない。

「あとは……ええっ、と……なんかあるか……物を燃やす……は言ったか……?」

まだぶつぶつと誠がイメージを唱える中、一人はうっすら目を開けると、手首を掴んで更に集中させる。炎がゆらりとその形を変え始め、円になろうとした。
――その刹那。

「くっそ……他に……他に何か……!」
「ナッツ!!」
「は……」

誠の集中は、そこでぶつりと途切れた。目を開けてみれば、いつの間にかクレイが側に来て、何かを支えている。嫌な予感に、誠の心臓が変に大きな音を立てる。
その予感は、悲しい事に的中していた



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