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ホールは入学式の時とは違い、不気味に思えるくらいのだだっ広さに虚しさを覚える程だった。磨き抜かれた床は相変わらず、天井近くに設置された窓から入る光に照らされていた。そして遥か上空から神々と祖先は、魔法の道を学び始めた生徒達を見守っている。

「ルールは簡単。今回は……火の球を『生産』して、そこの的にぶつける。火属性の奴は有利かもな。あ、属性っつーのは、空気中のマノが体内循環することにより、体の中にあるマノのバランスが崩れることで生じるもの……だっけな。火、水、風、地、雷、木、金……あと、すげえ希に魔って呼ばれるのもあったはず……。自分の属性のものはマナジーを使わないで『生産』出来るメリットがある。勿論属性じゃないものも『生産』は可能ってか、そうじゃねえと困る。まあ今の時間だと三分の一出来りゃいいほうか?あとはまあ、出来た奴からホール内で好きにしろ」

ホールの一角では、簡素な五つの的の横で、ネイティが説明を終えた。的は記憶石から出したものらしく、ネイティの手には赤い記憶石が握られていた。皆とりあえず仲良い者同士で集まり散り散りになる中、一人の男がずかずかと大股歩きで的の前に現れた。

「どけ、下等貴族共!僕が貴様らに、見本というものを見せてやるぞ」

狐を思わせる吊り目が、更に吊り上がる。グランは意気揚々と前に出て、迷いもなく手のひらを天にかざす。そこに、颯爽とダーマが駆け、横に立った。幾分かの身長差を埋めるため、ダーマは膝を折って主を見上げる。

「殿下……くれぐれも、人間を的にするような真似だけは止めて頂きたいのですが」
「フン、分かっている。使えない的を相手に遊んだところで、下等な者は恐れをなし逃げ惑うだけだからな」

その視線は、誠達と話しているナッツに注がれていた。ちょうど後ろを向いていたかつての同士を一際強く睨み付けると、その怒りを押し付けるかのように、荒く言葉を紡ぐ。

「今こそ、僕の大いなる力を見せ付ける時!我が思いに答え、ここに示せ!すべてを浄化する聖火よ!」

ぼう、とグランの手の上で赤い炎が燃え上がり、ぐるぐると回り球体を作り上げていく。教室でも見せた電気ボールの、一回り小さい球が出現した。



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