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ぞろぞろと皆が教室から出ていき(先程のことがあったからか全員大人しく言うことを聞いた) 、ルームハリーヌ一行は最後尾について行こうと決めていた。人が少なくなりつつある教室で、実践ということでそれぞれが思いを膨らませる中、ナッツは浮かない顔をしていた。そこに一人の影が、忍のように近寄って彼の隣に立つ。

「不安、だったりするか?」

黒い髪を揺らして、誠がナッツの顔を覗いた。ナッツは慌てて口を開きかけ、閉じて、誠から目を反らして、再びゆっくりと口を開く。

「うん、そう……だな。魔法使うの、何年かぶりだし……昔のこと、ちょっとだけ思い出してたんだ」

ナッツは青白い顔で弱々しく笑う。世界のことを知らない誠は、ナッツの過去については何も言及出来ない。クレイ、ルカとライチが教室から出て、無言のままそれの後を追いかけようとした時、誠は苦し紛れに口を開けた。

「あ、あのさっ!」
「なんだ?」

ナッツはきょとんとして、金魚のようにぱくぱく唇を開け閉めする誠を凝視する。誠は胸の前で拳を握ると、精一杯の笑顔を作った。

「俺の弟に……すっげー不器用なのが一人、いるんだ」
「うん?」

急な話題転換に、ナッツは首を傾げた。そうして、誠が一応話の主導権を握りつつ、二人ははぐれないように、魔物の明かりに照らされる廊下を歩き出す。

「ほんとに何にも特技とかなくって、いっつも負けっぱなしで、勉強も喧嘩も……。特に手先はほんと駄目で、料理の手伝いさせたら皿一枚は絶対割るんだ」

大きな身振り手振りを入れながら、誠は続ける。

「でもさ、俺の誕生日、そいつ……今日一日兄ちゃんは何もしなくていいよって、俺の代わりに料理作ったんだぜ!知らねーとこで練習何回もしてさ、絶っ対無理だと思ったのに……あー、だから、その、つまり……だな」

誠は眉を潜めて、綺麗に結われた髪を乱すのも構わずに頭を掻く。数回唸った後に、誠は思い切りナッツの背中をばしんと叩いた。

「いてっ!?」
「い、一回や二回失敗して周りに何か言われても、気にすんなよ!出来たらこっちの勝ちなんだからな……あー、なんかちげー、な。とにかく、諦めんな!どうせ俺も最初は出来ねーから一緒だ一緒」
「……うん。ありがと……」

ふいっとそっぽを向いた誠に対して、ナッツは堅かった表情を緩めてにっこりと微笑んだ。



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