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空気の道を駆ける羽ペンはまるで銃から放たれた弾丸だ。最前列の男子生徒の頭頂ギリギリを走り(その際彼の自慢の髪が数本パラリと落ちた)、弾丸はそのままぐんぐん加速し風切り音を鳴らしその先には――狙ったかのように一対の紫。

「ライチ!」
「えっ」

ガツッ!!と硬い音と共に、ライチの背後にあった机にペンが突き刺さった。摩擦のためか、ペンと机に空いてしまった隙間から少々の煙が昇る。擦れ違いざまにライチの横髪が何本か風に舞った。

「あああ……ありがとう、クレイ君……」
「怪我は?」
「な、ないよ、ぜぜ全然大丈夫……でっでも、クレイ君が、いなかったら……っ」

言いかけて、ライチは全身を小動物のようにぶるっと震わせた。溢れんばかりの涙が紫の瞳を大きく揺らす。クレイはライチの腕をひっつかんで引き寄せた状態で、震える彼を安心させようと、そっと頭に手を乗せた。クレイの精一杯の慰めだった。

「んで、『操作』。こいつはものの形変えることもねえし一番イメージもしやすい。よってマナジーの消費も最小限なお得な種類な。まあもちろん魔法はイメージある限り可能性は無限大ってやつだから、一概にこの三種類に分けられる訳でもねぇけど」
「おいちょっと待てぇ!!何事もなかったように話進めてんじゃねーよ!!!」
「マ、マコト君相手先生!」
「……進めてんじゃねーですよ」

そこに切り込み隊長のマコトが荒々しく立ち上がる。が、ライチの割り込みによりその勢いは一気に萎み、ぼそっと聞こえるか聞こえないか微妙な声量で渋々呟いた。
ネイティはそれを聞いても尚、申し訳なさそうな様子を欠片も見せずに、欠伸すらしてみせる。

「あー、悪い悪い。本当は全部通り抜けて後ろに刺さろうとしたんだけど、やー人間なら失敗の一つや二つあるんだなこれが」
「ふざっけ……ないでください!!普通に危ないじゃないですか!」
「まあ終わり良ければ全てよしって事で。んじゃまあお前ら、ホールに移動しろー。あとは実践あるのみだ」

怒りで噴火しそうな誠をライチとナッツが何とか押さえつけて、マイペースな先生の先導のもと、クラスは動き出した。




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