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「クレイ!?」
「おい、大丈夫なのか!?」

明らかに様子がおかしいクレイの背中を、あやすかのようにルカが擦る。羽ペンの虜になっていた誠達も、流石に震え出したクレイを放ってはおけない。ルカは瞳の揺めきを消し、神妙な顔をして老人へと視線を移した。

「……ねえ、お爺さん。お願いなんだけど……」
「言わずとも分かる。……金髪と赤髪の若造を除いたそこの三人、お前達の探し物はカウンターの側にある。積み上げられてあるから五つ持って行くが良い。今日の詫びだ、金は取らん。……わしは二人と話がある」

老人は有無を言わさぬ眼光で、三人を睨み付ける。彼らはそれぞれ言い分があったものの、その目を見てしまっては反論をする気も失せてしまった。顔を見合わせると渋々といった態度で頷き、クレイの様子が気になりつつも、そっと部屋を出ていった。

騒がしかったルームメイトが去ってしまい、クレイの荒い息だけが部屋に音をもたらす。自身の体を抱き締めながら顔を俯かせる彼は、数分前と同じ人間だとは思えない程だった。果たして怯えているのか、恐れているのか、それはルカにしか分からない。

「……この本……いつ、発行されたの、ですか?」

真っ青な唇から、か細い声がこぼれる。老人な悠々とした態度で、クレイの手の中にある本を見つめた。

「ふむ……その本、数は少ないものの、一時期評判となったな。光と闇の生物対比百種……初版は六年前だ」

六年前。まだ、クレイ達が十歳の頃だ。

「そんな……違う。……そんなはずが、ない……」
「……クレイ?」

くしゃりと、濁った赤髪が掴み上げられる。目の焦点は合っておらず、震えは更に酷くなる。ルカは思わず、荒っぽいとは思いつつも、クレイの肩をがっと掴んだ。

「クレイ!しっかりしてよ!……ゆっくりで良いから、俺にも何があったか教えてよ。相棒」

ルカは日頃の態度とは反対に、驚く程焦っていた。今までだったら、クレイが苦しむ理由は明確だった。長年側にいた経験は、伊達ではなかった。
それが今回に限り、クレイの身に何が起こっているのか、ほとほと想像がつかなかったのだ。



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