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「本当にすまんかった」
「……いえ……少し驚きましたが、気にしては」
「おっかしいなー、なんでこれだけ取れないんだ??」
「い゛っ……!」
「ぎゃーっバカナッツなにしてんだバカ!!!クレイの頭もげるだろうがー!!」

カウンターの奥にある、埃っぽい小部屋。中央に置かれた机の脇に小説らしき本が積み上げられ、端にある背の低い棚には埃被ったいくつもの記憶石が眠っている。本が剥がし終わった五人は、元通りに戻した後、ここへ老人に案内されていた。ルカは先程の事を引きずっているのか、クレイの隣で沈んだ顔をしている。クレイの顔は……まだ、ただ一冊、本が張り付いていた。それを無理矢理外そうとするナッツは、誠にひっつかまれて脇に待機していた。

「わしの管理不足だった。きちんと躾しておいたはずが……まさか、人を襲うなど……本達に魔法をかけて数十年、初めての経験だ……」
「やはり、魔法がかけてあったのですね?」
「……うむ」

老人は何度も頭を下げた後に、ばつの悪そうな顔をして眉を潜める。質問をしたクレイは、それからの事を考えておらず、何を言えば良いか分からず口を閉ざす。そうして、彼の横から重い溜め息が吐かれた。

「どんな魔法だったんです?それ。さっきも叫んでましたよね……『レガハロ』って。あれ言ったら、今クレイに引っ付いてる本以外パタパターって落ちたじゃないですか」

冷めた目で、ルカは老人を見つめる。老人は、一瞬言葉を詰まらせたが、諦めたように肩を竦めると渋々口を開いた。

「古来から伝えられ、今は封印されし魔法……鍵魔法と呼ばれるものの一種だ。これがなかなか便利だから、重宝していたのだが……これを機に、全ての魔法を解くとしようか……」
「それで、具体的にはどんな魔法だったんですか?」

もう一度、ルカは繰り返す。老人は周りを何度か見渡した後に、ゆっくりと口を開いた。

「簡単な事。それは、魔法の原理の原理、全ての源……己の持つイメージを、無生物に宿す事だ」
「むせーぶつに、やどす……?」
「ハイハイお前は隅っこで本でも読んでろ」

頭から疑問符を飛ばすナッツに、誠はその辺に置かれていた本を差し出した。



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