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クレイの手にある空気より軽いドッグリィが、彼の頭ひとつ分飛び抜けて笑顔溢れる街中を見渡している。クレイ達と同じ緑のローブを着ている者は少なくなかった。

「おい……お前ら」
「なーに女顔クン、お守りは疲れちゃったんですかーん?」
「本屋まで……あと……どれくらいなんだよ」

未だにナッツの手から逃れられず、疲労しきった兵士の顔をして振り返った誠に、クレイはそっと同情する。しかし、じっと見つめていたら、誠は気まずそうにクレイから目線を反らしてしまった。体の中にちくりと刺さった刺を、クレイは見てみぬ振りをした。

「どれくらいって……ねえクレイどれくらい?」
「そんなに遠くはない。あと三分もあれば……」
「ぐおっ!?」

クレイが言い切る前に、誠の腕が力強く引っ張られた。体を半ば後ろに向けていた彼は、ピンと手足を伸ばして仰け反る。間抜けな姿に、後ろでルカは涙を浮かべてまで笑いを堪えていた。

「マコトー!あれって何だ!?初めて見た!」
「だーっ!だから俺もここは初めてだってーの!!」
「ふふ、あれは記憶石の中でも特殊な武器生成用の記憶石、魔心器って呼ばれるものだよ。多分授業で使うんじゃないかな」
「へー……」

ナッツと誠はライチの説明に感嘆の声を揃えて、意気揚々とショーウィンドウを覗く。糸を通してネックレスのように置かれたそれは、一点の濁りもない純潔な白。世界に様々な白はあれど、花よりも美しく、また儚い色に、二人共息をするのを忘れていた。

「魔心器は限られた場所でしか取れなくて、名前の通り持ち主の心を映し出す鏡なんだって。その人にぴったりな武器に変身してくれるんだよ」
「そりゃ便利だな……いや、ちょっと待て、ちょい待て……授業で使うって……武器、使うのか?」

誠の瞳から、瞬時に輝きが失われた。恐怖で青くなる顔に、ライチは慌てて手を横に振る。

「あ、あ、でも、使うのは確か戦闘学の時だけだよ。先生も言ってたでしょ?魔法や武器はホールか実習じゃないと使っちゃ駄目だって……日常で頻繁に使う訳じゃないから、そんな怪我とかは大丈夫だよ」
「お、おう、そうだ……よな」

ぎこちない動きで何度も頭を上下させる誠だったが、顔の青みが引く事はなかった。



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