間章


「……失敗したか」
「申し訳ありません。隅々まで探したのですが……」

人のものではない耳を情けなく垂らしながら、彼女は私に跪いている。
無能は罪だ。……しかし、彼女の場合は別であろう。彼女は懸命に働いてくれている。ここは失態のひとつ、許すのが定めか。

「過ぎた事は良い。しかし、あれは必要な物だ。引き続き調査を頼む」
「ありがとうございます」

平静を装っているが、内心安堵で心が満ちていることだろう。溜め息混じりの礼は、安心しきった証拠だ。
やはり、思う。彼女は我が支配下に相応しくない。
我が野望。我が支配。全ての望みが叶えられた時、私達は長き時としがらみから解放されるのだ。
だが、彼女は何も関係ない。つくづく不可思議な女だ。それを僕とする私もどうかとは思うが。

「分かっているとは思うが、お祖父様には内密にすることだ。万が一知られた場合、お前の首を跳ねる」
「了解しております。一度は死んだこの体と魂……貴方様の仰せのままに」

お祖父様の事を思い返すと、時が動き出したことを実感する。お祖父様のお言葉……無礼だが、胃の底が沸騰するかと思った。
何故なのですか、お祖父様。あいつらは我々を裏切ったではありませんか。この世界から逃げ出した裏切り者ではなかったのですか。

問いただしても、無知は罪ではないの一点張りだった。

己の役割も知らず、理解せず、のうのうと生きている憎き、跡継ぎ。
何故?何故私ではなく、あの男が。

「……待っていろ、次代の王よ」

私の手で、必ず息の根を止めてやろう。その瞳に、地獄の景色より濃い絶望を刷り込んで。



間章

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テーマ「人外ファンタジー」
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