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「お前、明らかに入学生じゃないだろ。なんでこんな所にいるんだ?」
「……私は、グランティーノ様の『条件』です」

スッと、見る物を怯ませる闇の瞳が開かれる。見れば見るほど先程とは違うダーマの態度に、冷たい風が教室中を吹きすさぶ。一体どちらが、彼の本当の姿なのだろうか。

「授業中は、お邪魔にならない場所で待機させて頂きます。それ以外、常に殿下と共にあり、殿下のご成長を助け、殿下を必ずや危険からお守りする……。それが私の使命であり、国王が出された『条件』です。どうか、ご了承ください」

頭は、下げなかった。ダーマは力強い光を宿して、男を見つめ続けた。
クレイの奥底にあるものが、ざわりと騒いだ。何物にも代えがたい意思が、ダーマの目の中で溢れんばかりに輝いている。彼もまた、自分の生きざまを見つけ、歩んでいる一人なのか。真摯な眼差しに、クレイは唾を飲み込んだ。
必ずやお守りする。何よりもその両目が、非現実的な使命の実現を、ダーマの誇りを裏付けていた。

「……ま、それなら仕方ねぇな」

がしがしとボサボサのくすんだ青髪を掻くと、男性は背を向ける。すると、身長を五センチは縮めているであろう猫背が露になった。ひょこひょこした足取りといい、何とも不可思議な先生だ。

「おーい席つけ、ホームルーム始めるぞー」

聞いているだけで気の抜ける声を出しつつ、ようやく本来の仕事をし始めた先生は教卓に手を乗せる。グランの騒ぎで集まっていた生徒達が着席していく中、ダーマと、物思いにふけっていたはずのルカは彼から片時も目を離さなかった。



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