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その時。蝶番が外れんばかりに、バンッ!!と扉が開け放たれた。そのままそれは転がるように雪崩れ込み、リビングへと姿を現す。

「ど、どうか、したんですか!?」

何かに怯えたような口調で叫んだ新たなる客人に、四人の目は釘付けになった。先程の叫び声がなかったかのように、空気がしんと静まる。小柄な少年だった。……注目を浴びるその人が、ポッと顔を赤くした。

「えっ……あの……ごめんなさい……」

そのまま恥ずかしそうに、もじもじと手を擦り合わせて俯いた。そのまま慌てて踵を返すと、キィキィと風に揺れるハリーヌの扉を静かに閉めた。

黒髪の男がルカの隣に、余った席に最後の少年が座る。すると少年が四人の顔色を伺いながら恐る恐る質問をした。

「……さっき、叫び声が聞こえた……んだ、けど……」

それを聞いて、四人は同時に納得した。

「それ、こいつのせいなんだ!」
「そうそう。まどろっこしい顔してるから」
「おい!!」

ナッツは黒髪の男に再び指差し、ルカがうんうんと大きく頷く。机を荒々しく叩く男を、客人はじーっと見つめて小さく息を吐いた。

「……ああ……」
「てめえもああってどういう事だ!」
「あっ、ごめんなさい!つい!」
「ついってどういう事だああああああああああ!!」

せっかく綺麗な男の顔を、鬼のように歪めて睨まれた少年は、ハッとしたように口を手に当てる。こちらはどうにも仕草が女性らしい、と一言も喋ろうとしないクレイは思った。

男を女顔と認めた少年だったが、彼も所々の仕草に女々しさが隠れていた。更に、丸みの帯びた顔、大きな紫色の瞳、子犬の毛のようにふわふわくしゃくしゃとした首下までの緑髪、背の低さなどはやや女性的だ。双葉のようなアホ毛は彼の幼さを表しているようだ。

「ったく……。あー、そうだ、自己紹介がまだだったな。俺、大和誠。誠が名前な」

男、誠がぶっきらぼうに言うと、彼を除いた全員がきょとんと目を丸くさせた。

「あー。……だから、俺はずーっと遠いとこからこっちに来たんだよ。だからこんな名前なんだ」

そんな空気にいたたまれなくなった誠が、苦笑しながら早口で言い繕う。あのルカからも、へえーと感嘆の声が漏れた。

「で、そっちは?」
「俺ナッツ・カリバー!!」

ナッツが真っ先に、眩しい笑顔で手をぴんと天井へ伸ばした。

「俺ルカ・ヘルメス。こっちのちょー無愛想ちゃんがクレイ・ヴィオラね」
「ルカ。……よろしく」

クレイの鋭い視線を、ルカは笑いながら受け流す。誠はルカの言葉を完全に否定出来なくて、クレイに少し申し訳なく思った。

「えっと、僕はライチ・アレクサンドル。よろしくね」

頬に朱が差した、照れたような笑みだった。



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