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多目的ホールは校舎内ではなく、校舎の横に独立して建っている白いドーム型の建物だ。授業で危険な魔法を使う場合は街に影響がないように、ホール内で魔法が遮断される、人畜無害の魔法が張られた多目的ホールを使用する事。学園はそれを絶対条件としている。そのため広さは、想像以上に果てしない。ホールの周りを一周走るだけでも十分な運動になるだろう。
真紅の床はツルツルピカピカに磨きあげられていて、天井には神が人間に手のひらサイズの杖を授ける絵が大きく描かれている。きっと誰もいない時なら、静かで広々とした解放感満ち溢れる場所なのだろう。

「……うわあ……」
「……すごいな」

素直な絶句だった。魔物の大群かと見間違える程、人々がうぞうぞと蠢いていた。どうやら高等部の全学年のクラス発表を記した掲示板が各方角に出されているらしく、誰それ先生が良かっただの、誰々と一緒だやったあだの、一種のお祭り騒ぎにも見える。ひとしきり間抜けな面を晒した後に、二人は精神的に重い足を引きずって深緑の集団が群れをなす正面の掲示板へと向かった。

「……へえー、なかなか粋な事してるじゃん」

遠くからは見えなかったが、群れの後ろから掲示板を見上げて、ルカは声を弾ませた。隣にいるクレイも腕を組みながらひとつ頷く。

掲示板は宙に浮いていた。正確には、板にクラスと寮を書いた紙を貼り付けて、真下にいる教師が浮かせていたのだ。その証拠に、黒いローブを纏う若い男性が不自然に右手を掲げっぱなしにしている。その手で操っているのだろう。

「おぉーい!後ろの方の奴等ー!見えるかー!?」
「まったく見えないに決まってるだろう!何とかしろ教師!」

集団の何処からか怒号が飛ぶ。予想通りではあるが、その乱暴な言葉遣いにクラスとルカは顔を見合わせ呆れ返った。しかし問いを投げた教師は、更に声を張り上げる。

「よーし、じゃあでかくするからちょっと下がれー下がれー!」

押し合いへし合いしながら、後ろ向きの深緑の軍団が二人に押し寄せて来る。その不気味な光景に、二人は足早にその場を下がった。



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テーマ「人外ファンタジー」
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