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翌日の朝。整備され尽くした美しい桜並木に挟まれた煉瓦道を通って、その途中初等部や中等部の校舎を横切り、緩やかだが着実に学生の体力を奪う坂を上りきり、明らかに貧富の格差がある四つの寮の横を通り、またどこまでも続く並木道を通り、アルティマニー学園高等部の文字が掘られた重厚な金のプレートが貼り付けられた重々しく巨大な鉄柵の門を潜ると、そこには新入生が向かう多目的ホールへの案内図が掲示板に張られてあり……

「……長いっ!!」

たまらなくなったルカが、ホールへの道の脇で鼻息荒く叫んだ。腕を高く振り上げると、学園の制服である深緑の新品ローブが早くも乱れた。胸には王冠と魔法の杖をモチーフとした金の刺繍が施されており、素材も非常に高級品で袖通しなめらか。ギルド本部から支給されなければ、家計を賄うのに精一杯なクレイ達には一生縁がないような代物だ。

「希望に胸を弾ませる学生を振り落とす絶望の道……か……」
「いや、単純に領地の無駄使いだから。絶対そんな重苦しい事考えてないから」

真剣そのものな表情で何かを悟ったクレイに、ルカはげんなりとして言葉を返す。周りを見渡してみれば、他にも綺麗に綺麗に整えたであろう髪をくしゃくしゃにして門を通る学生は少なくなかった。

「もうちょい効率ってモンを知らないのかねーここの学園長サマは。ローブは今日送られてくるわ、道は長いわたるいわ……ねークレイ帰りたいー」
「まだ始まったばかりだろう」
「目の下真っ黒な人には言われたくないよね」

ルカの言葉の通り、クレイの目の下にははっきりとくまが出来ていた。それを裏付けるかのように、クレイは手で口を覆うと大きな欠伸をする。生理的な涙で睫毛を光らせるのを見て、ルカはやれやれと肩を竦めた。

「いやあー、まさかあのクレイさんが、新たな学園生活にワックワクで眠れないなんてそんな馬鹿なことはしないに決まってるよねー」

クレイはごくごく自然に、ルカを見ようとした瞳をすーっと前へずらした。

「…………………………ああ」
「えっなにそれ、えっちょっと待って冗談だったんだけどふざけないでよクレイ、これ超渋々引き受けた感満載じゃなかったの」
「わくわく……というより、色々思う事があって眠れなくて……」
「あんたは初任務を前にした初心者かっての」

そうは言いつつも、クレイの複雑な胸の内を分かっていたルカは、それ以上無駄な追求はしなかった。仮にも彼は、クレイの相棒なのだ。

「あっあの子ちょーかわいい!タイプ!」
「……早く行かないのか」
「えーもーちょっと待ってよ疲れたー」

……相棒なのだ。



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