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少年が目を開けると、逆光に照らされる青年の顔があった。青年が自分に合わせてしゃがんでいるのだと理解すると同時に、少年は青年の端正なそれを、思わずまじまじと見てしまった。
きりりと引き締まった表情は男らしさを感じられ、鋭い目付きは睨まれているような印象を与えてしまう。しかしその瞳は赤く、澄んでいる。まだ丸みの帯びた少年の顔とは違い、目鼻立ちもくっきりしており、乗せられた手も骨張っている。低い声も合わさってとても大人びて見えた。知らない大人を目の前にした少年は、急に機械のようにぎくしゃくし始めた。
「あ、ありがとう、ございました」
「頼まれてやっただけだ、気にするな。……所々に怪我があるな」
青年の視線が、少年を一通り見回すように上と下を行ったり来たりする。それから、思案するように顎に手を添えた。青年の表情は終始無表情で、少年はそれすらも大人の魅力と思った。
「……治癒魔法は禁じられている…………。手を出してみろ」
「あ、は、はい」
少年が大人しく手を出すと、青年はその手を出来る限り優しく取る。そして、少年の掌と水平になるようにしてもう片方の手をかざした。
「……薬」
ぼそりと呟くと、かざされた掌に光の粒子が集まって何かを形作っていく。小さな瓶の形になると徐々に茶色い色が付き、あっという間に少年の掌には小瓶が転がった。
「塗り薬だ。傷口を洗ったら悪くならないうちに塗っておけ」
「あ……ありがとうございます……」
「お〜いクレ〜イ、見つかったー?……みたいだね」
ぽかんとする少年をよそに、茂みからひょっこりと、少年と同じ眩い金髪が覗いた。
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