聖なる地にて
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「我らは人間に絶望した」


――全ては、その言葉から始まった。いや、終わりを告げたと言っても正しいだろう。
平和な日々からの終わりを告げた、運命の言葉だった。

「人間は……人間によって、この世界の破滅を招いた。しかし、どうだ!!我らが同胞よ!!人間は我らに責任を押し付け、更には人間の信仰がないと我らは生きてはいけない!!嗚呼、こんな理不尽な事、あってたまるだろうか!!なあ!!我らが同胞よ!!!」

高らかに拳を振り上げるその手はまだ小さい。響くその声は幼いボーイソプラノ。しかしその言葉は、その場にいた数万の生命体の身体を大きく震わせた。
苔の生えた古びた石の搭頂上に立つその少年は、肩までの赤い髪を激しく靡かせる。ギラギラと妙な光をたたえたその目には、飢えた人間に似た、人間ではない生命体の群れが映っている。喉がちぎれんばかりに声を張り上げ、聖なる者――神々とは思えないほどの怒号を、ひたすらに、力の限り飛ばす。それは少年への命乞いか、この世界に蠢く人間に向かっての呪いか。

「人間は我らを信仰し、我らは人間に恵みを与える……それがあるべき姿のはずだ。なのに!今や人間は我らを殺そうとしている!遥か昔に結ばれた契約を堂々と破り、人間共は我らへの感謝の気持ちを忘れて自分の欲望のみを!満たそうとしている!!!皆の者!!これが許せるか!!愚かで欲望にまみれた人間を!!!自分勝手で情もない、醜い人間を!!!」

その場こそ、地獄と言ってもよかったかもしれない。普段静かな空間が流れる憩いの森林が、今や阿鼻叫喚の図である。この場にいる全ての神々の心は、ひとつだった。ただ一つの欲望が、欲望まみれた人間などと言った事を差し置いて、急激に神々の心を圧迫し、凄まじい衝動に駆られたのである。
正常な思考を持った者など、居やしなかった。少年の後ろでその様子を見守る四つの影を除いては。

「さあ、迷う事はない。今ここに宣言しようではないか、我らが同胞よ!!!……全ての人間への、復讐を!!!!」


今ここに、聖なる地ブレイブフォースで、戦いの火蓋は切って落とされた!


   

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