「本当に戦士として対等なのはさ、」

俺の言葉に、スコールが俯いていた顔を上げる。

「ティナとオニオンかもしれないっスね。」

スコールはしばらく俺の顔を眺めて、再び下を向くと俺の左手に包帯を巻く作業を再開する。

「さっきの襲撃のことか。」

「うん。あれ見ててさ、思ったんスよ。」

慣れた手つきで包帯を巻くスコールの手元を見つめる。ケアルを使うほどでも無い切り傷。貴重なポーションは勿論使えない。かといって放置するには血が出過ぎた。

「………。」

スコールは何も言わない。でも同じことを思ったはずだ。さっきの戦闘、俺の対角線上。バッツの後ろで一瞬悔しそうな顔をしたのが、セシルの肩ごしに見えたから。

ついさっきだ。
俺達は今後の予定について確認するために、珍しく10人全員が秩序の聖域に揃っていた。確認は早々に済んで、いつも行動を共にしているパーティーでそれぞれ話し合っていた時だった。突然ケフカとクジャが襲撃してきたのだ。
それなりに距離を開けて集まっていた俺達の真ん中に現れた2人は、様子見程度のつもりだったのだろう。大きな戦闘にはならず、3発ほど魔法を放つと帰っていった。
二人が現れた時、即座にウォーリアは剣を構えて、ティナとオニオンは背中合わせになった。俺の前にはセシルが立って、右にクラウド、左にはフリオニール。対角線上にいたスコールとジタンの前にバッツが立つのが見えた。
無意識の行動。でも、明確な意思を持った行動。

俺達は守られていた。

「なんてゆうか、過保護なんスよねー。」

「………。」

「無意識だからこその本音っつーか。」

きっとバッツやセシル、クラウドやフリオニールは自分たちが取った行動に気付いていない。オニオンは気付いているようだった。戦闘の後に呆れたような視線を向けてきたから。
傷付いてはいない。他の3人に比べて自分が未熟なのも幼いのも知ってる。でも、ちょっと悔しい。
きっと幼い頃から軍事教育を受けてきたスコールの悔しさは俺より遥かに大きいんだろう。手当てをする時に、スコールは真っ先に俺の所に来た。同じようにかすり傷を負ったバッツでもジタンでも無く、俺の所に。

「バッツは俺とだと、前に出たりしないんスよ。」

「………。」

「スコールだってクラウドに庇われた事なんて無いだろ?」

「………。」

「そこがまた悔しいんスよねー。」

あの時隣にいたのがバッツだったなら、俺は接近戦に持ち込むために体制を低くしただろうし、バッツはそれをサポートするために魔法を構えただろう。バッツは隣にいたのが普段から行動を共にするスコールとジタンだったからこそ、庇うように前に出た。
俺と一緒にいた3人だって同じだ。俺の位置にいたのがスコールだったら、違う陣形を取ったに違いない。

結局の所、俺達は随分と甘やかされているのだ。仲間だと認められていないわけでは無い。認めた上で、彼らは俺達を甘やかす。

スコールはむっつりと黙り込んだまま、俺の腕に包帯を巻きつづける。端を留めて、完成。今度は俺がスコールの腕をとって、消毒を始める。
思うことの10分の1も言葉にしない同い年の仲間は、俺が思ってる以上に悔しかったらしい。遠くからバッツがチラチラとこちらを見るのにも、完璧に無視を決め込んでいる。
スコールだって分かっている。弱いと思われているわけじゃなくて、この上無く可愛がられていることぐらい。でも、戦士として育ったプライドが庇われた事実を許せなくて、俺の所へ来たんだ。
同い年で、同じように、でも自分とは別の仲間に庇われた俺の所へ。

スコールの腕に包帯を巻き終わって、使い終わった道具をしまう。あーあ、と空を仰げば、正面のスコールも同じように空を見上げたのが分かった。

「強くなりたいっスねー。」

「…ああ、そうだな。」

強くなりたい。肩を並べて戦えるように。逆に前に立てるくらいに。



大人になりたい、という願いは、余りに子供じみていて口に出せなかった。





2010/11/23 00:46
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