01 zone out
――チュンチュン
どこかで雀が鳴いていた。
ああもう朝か、と自室に差し込む明るい太陽の光で、浮上しはじめた意識の中で私――僕は思った。
「お嬢さ……いえ、坊ちゃん、朝ですよ」
とても聞き心地の良い、優しげなテノールの声。
なぜか僅かな違和感が、胸に生まれた。
――これは本当に僕で、その声は彼なのか?
ありえない。そんなはずはない。なにせ僕は僕ではなくて、真には『私』であるのだから。
……よくよく考えてみると、このベッドの感触もおかしいのだ。
なんというか、妙に柔らかいというか、寝心地がいいというか……。
考えるのも面倒だ。再び眠ってしまいたい。
「あ・さ・で・す・よ」
「………………うるさい………」
布団を引っぺがされ、寒くなって身を縮めた。
細く目を開けると、眩しい光が痛い。
それと同時に、この部屋が初めて僕の視界に入った。
……洋式建築、だ。
俗に言う、ヨーロッパの貴族が住んでいそうな屋敷である。
……『私』は日本人ではなかったか?
完全に目が覚めてしまった。
自分の体を見ると、身につけているのは白いネグリジェ。
仰向けになると、ベッドは豪華な天蓋つきだった。
そして、もっとも驚くべきことは――
――傍らに立っている人物が、執事服を来た東月錫也であったことだ。
「………………これは夢か」
すると彼は、
「いいえ坊ちゃん。現実です」
と微笑んだのであった。
▼ 本編と比べてだいぶ短め。友人の会話で生まれた妄想の産物です←
まだ続きます。タイトルの意味は「眠る、集中力を失う」だそうです!
2011/06/02
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