DRRR!!&戯言シリーズ→普通の主人公(♀)の話 | ナノ
02

「……熱(あつ)、」

朝起きると、体がだるくて熱かった。
ただの風邪だろうと思って、とりあえず学校は休むことにする。
安静にして寝れば治ると教わったから、とりあえず私は寝ます。はい。


♂♀


『ピーンポーン』

一体誰だ。こんなときにインターホンを鳴らす奴は。
きっととても失礼な人間に違いない。
思考はできるけど、しかし。
重い。ベッドから起き上がれない。
ふとんにくるまって、どうしたものかと考える。
でも熱のせいか、頭が回らない。
視界がはっきりと見えない。眠ってしまいたい。
起き上がりたくない。無理。
それでもインターホンの音は鳴り響く。本当に五月蠅くずっと鳴り続けるので、

「…………」

顔を顰めて鉛のような体を引きずってふとんを出た。
そこらへんにあったカーディガンを適当に着て、玄関に向かう。
 少し寒い。風邪のせいだ。

 でも熱くて。のどが渇いた……。
ああ、もう、しゃべる気力も湧かない。

     何も考えたくないなあ。

次はいっそう強くガンガンと扉をたたく音。
ガンガン痛いのはこっちの頭だよ。
つーか誰、こんな朝っぱらから――って、もう昼?

 宙に浮いているような感覚で時計を見て、

それからやっと、玄関に辿り着いて――扉を開けた。

ものすごくだるい。誰なんだよ、風邪の人間にここまでさせる鬼畜は。
 臨也さんかな。絶対そうに違いない。
と、思ったのだけど。

「――静雄、さん?」

ことごとく予想は外れ、 て、
 

     やだ、  限 界、



  体が 傾 、  く、


「……っと、こりゃひでえな」


なにがですか。

開きたくないと主張する口を無理やり動かしてそう訊いたつもりだけど、

そのときの私は答えられていたのだろうか。
わからなかった。


♂♀


今度起きたら、目の前に池袋最強がいましたマル
なにこのアンビリーバボーでデカルチャーな展開。

「……静雄さん、」

かなりびっくりしたのを抑えて、尋ねる。
いくぶんか体は軽くなっていて、気付くと私はソファーの上だった。
ちなみに額には冷えピタ。
なんだか申し訳ない。

「あ?」

彼はなんだ、と応える。

「あの、すみませんでした」
自分でもあそこで倒れるとは思ってもみなくて。

微苦笑すると、静雄さんは眉をひそめた。

「熱、なんであんなになるまでほっておいたんだ」
40度もあったんだぞ。

こんな私に親身になって心配してくれる静雄さんは、本当に、とても優しい。
こういう人を好きになって、こういう人に恋をすればよかったんだろうなあ。
私って、どうしようもなく駄目人間だ。

「すみません」
「……なんで謝る」

私の謝罪に、静雄さんはさらに眉を顰める。
端整な顔が台無しですよ、
そう言ったけれど、それも逆効果だったらしい。

「……てめえ、」

さすがの静雄さんも怒りのボルテージが満タンに近いようだ。
苛立つ低い声。

額に青筋が浮かんでる。
臨也さんとは反対の意味で、私に腹が立っているのだろう。
そうはわかっていても、これは直しようがない。だってこれが『私』なんだから。

「ごめんなさい。
静雄さんが悪いんじゃないんです。静雄さんは悪くないんです。
私が風邪を甘く見ていたから、それで悪化したんだと思います。
私が、悪いんです。
私が駄目なせいで、そのせいで静雄さんに迷惑をかけてしまって。だから、」

「それ以上言うな」

静雄さんは力強い声で私の言葉を制した。

「それならお前には謝る以外に言うべきことがあるんじゃねえか」
「……。あ、はい」

そうだった。
あたりまえのことを忘れていた。
本当に、静雄さんは、優しい。
優しすぎるほどに、優しい。
こんな自己犠牲な奴にも、こんなに綺麗な言葉を向けることができるのだから。
だって大体の人間は、怒鳴りつけることしかしないから。

「………ありがとうございます」

ああ、なんて嬉しいんだろう。

なんでこんなに優しいんだろう。
裏表のない好意。惚れてしまいそうだ。

「静雄さん、後ろに向いてください」
「?ん、ああ」

唐突に私が言うと、彼は戸惑ったみたいだったけど、ちゃんとそうしてくれた。
私から見えるのは、その大きな背中。
そこには、多分幼いころから背負ってきた業というものがたくさん、

数え切れないほどあるに違いない。
それが解っているから、私は、――


「ありがとうございます、本当に」


再びつぶやいて、腕を回して、後ろから彼を抱きしめた。
確かに突然で、

なんの前触れもない行動だったので、さすがの静雄さんもびくりと驚いていた。


「――静雄さん。私の名前、呼んでくれませんか?」


さっきから一度も呼んでくれないじゃないですか。

拗ねたように。珍しく甘えてみると、


「……ふうり」


あたりまえのように答えてくれた。

あたりまえの言葉をくれた。
ああ、あなたには感謝しても感謝しきれない。


「もう一度」


「ふうり、」


こんなに、他人に名前を呼ばれるだけの行為が気持ちいいとは思ったことがなかった。
もっと。もっと呼んでほしいと思ったことがなかった。


「――好きです、静雄さん」


好き好き好き好き。好きです。好きなんです。愛してます。愛して、ます。
でも、
その感情が、臨也さんのそれとイコールなのかと訊かれると、迷ってしまう。
それも解っているのだろう。
その上で、静雄さんは。


「あぁ、知ってる」


と頷いた。私の言葉に対しての返事はしてくれなかったけど、今はそれで十分だった。


そっと。静雄さんの背中に、額を預けてみる。
温かい。これが、人のぬくもりなんだと。
臨也さんとは別の意味で実感できた。
温かい。これが、静雄さんの―――


世界で一番優しい心の持ち主の、ぬくもりなのだと。


▼ 誰か!文才を!ください!
  でも個人的に最後のシメの一文は気に入っています←
  2011/05/13
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