DRRR!!&戯言シリーズ→普通の主人公(♀)の話 | ナノ
外伝/05 因果

※ 戯言シリーズの話を含みます。
  そして若干R15指定?





昔の馴染みだ。すでに縁は切れたと思っていたが――
今、それは合った。





会いたくないけどね、あんたになんか。


♂♀


時が経つのは早い。
もう私も高校2年だ。
ここまで来るのに、私の周り――池袋では本当に色々なことがあった。
不思議で不可解でも爽快な物語が、あった。

そして今は夏休み。8月だ。
私は池袋西口公園の人気の少ない、少し奥まったところのベンチに腰を下ろしていた。
ここはあたりに木が茂っているので、森林浴にもとっておきで、なにより夏でも涼しい。
私の好きな場所の一つ。

「そういえば、」

ぽつり、と言葉をこぼして、一度伸びをする。

――このまえ面白い人に会ったなあ。

7月。まだ夏休みがはじまったばかりのころだった。
葵井巫女子という少女――多分一つ年上くらい――に出会った。
京都から旅行に来ていて携帯を落としたようだったから、それを一緒に探したんだっけ。

歳が大体自分と同じくらいか、年上。
そして京都。
このキーワードで思いつく人というのはたくさんいる。

まずは幼馴染みの【戯言遣い】【欠陥製品】こといーちゃんに、
【青色サヴァン】【死線の蒼(デッドブルー)】こと玖渚友。

中学時代の親友で【人間失格】の殺人鬼、汀目俊希もとい零崎人識。
同じくその時代親友だった【人喰い(マンイーター)】の殺し屋、匂宮出夢と匂宮理澄。

友のお兄さんで玖渚機関所属の玖渚直。彼の友人、霞丘道寺。
人識の家賊で三天王とも呼ばれる【自殺志願(マインドレンデル)】零崎双識。
【愚神礼賛(シームレスバイアス)】零崎軋識や【少女趣味(ボルトキープ)】零崎曲識と【ぺリルポイントの爆弾魔】。

【大泥棒】石丸小唄――

なにより、【人類最強】【死色の真紅】こと哀川潤。

そしてもう一人――――――


「よう、俺の嫁」


「…………」でたあ。

「なんだその幽霊でも見た的な顔は」
「なんでもありませんよ」


【人類最悪】【狐面の男】こと、西東天。

「ていうか、『痛い』ですよその呼び方」

彼はあの潤さんの父親の一人でもある。
そのうえ性質が悪く、世界の終わりを見たいと思い望んでいる傾向があるんだ。
なんてゆーか、なんでこんな人と知り合っちゃったんだろう自分。はあ……。
ため息しか出でこない。ああああ……。

「そうか?」

………………………………………………。
そうか?、じゃないです!
って言ってもこの人には意味がないんだよね……。

「はい、そうですよもう…………」

再びため息をついて、私は吐きだすように言葉をつぶやいた。
そんな私を見て、あいかわらずファンシーな狐のお面をつけているいい歳こいたおっさんは、


「ところでだ俺の嫁」
「なんですか」
「本題に入る」
「はあ、」


そう相槌を打ったところで、狐さんの纏う空気が変わった。狐面を取る。

――あ。これは、

いーちゃんの敵になるだろう人間独特の雰囲気だ。
恐怖を畏敬を畏怖を植え付ける、
抗いようのない、逆らいようのない。
読めない瞳が。暗い昏い眼が、私のほうを向く。

舐め回すように、品定めするかのように、
妖しく舌を這わすように快感を伴い――それは犯されるような気分だった。
嗚呼、やばい。
本能が察する。悟る。接する。
『逃げないと、』


「……怖いか?恐いのか」


ちがう。違う。違(ちがう)。


「そ、うじゃありません」


カタカタと震え始める手をぎゅ、と握る。
ここで逃げたら、目を叛(そむ)けたら。それは『負け』だ。完全なる『敗北』だ。
背徳的な性的な艶めかしい視線が、私を蹂躙した。


「なら、どうなんだ」


狐さんが一歩、近づいた。

二歩、三歩と、領域を――私が張った境界線を防御線を侵して冒して踏み越える。


「ひッ、や、来ないで、」


来ないで来ないでこないでこない、で、


自分の顔が恐怖に引きつっているのがわかる。
狐面の男は、なんのステイタスも持っていないのに、そこに存在しているだけで
『こわい』と植え付けるのだ。本当、『歩く恐怖』だよ、

狐さんの手が、逃げようとする私の腰にそっと、けど強引に添えられて引き寄せられて、


「ふ、んんっ?!、ん、」



口付け、だった。一度放しては再び口づけて。何回も何度もそれは繰り返される。
凶暴な、凶悪な。私の中のなにもかもを吸いつくして貪り食うようなキス。
舌を絡めとられて弄ばれて、呼吸ができなくなる。


「はぁっ、はぁっ、は」


ようやく解放されて、酸素を取り入れる。苦しい。
そんな私を狐さんは面白い生き物を見るように眺めていた。


「何の、つもり、ですかっ」


辛くて。涙目になってる。
でも私はキッと狐さんを睨んだ。


判らない。解らない。ワカラナイ。
なんで今になって、この人が来るの?
分からない。わからない。
どうしてキス、なんて、


「俺のところに来い」


――わかりたく、ない。


質問には答えずに、狐さんは面を被り直した。


「ぃや、です」


いまだ震える全身――そして声をできるかぎり抑えて、答える。
この人にだけは。西東天だけには、私の弱みを握られたくない。


「……そうか」


幾分か落胆したような声音だった。
失望、だろうか。後者だったらいいなあ。


――もう私は『あそこ』に戻りたくないから。帰るなんてもっと嫌だ。
人識たちには悪いけど、私の居場所は『あそこ』じゃない。ここなんだから。
そう、あの人が言ってくれたから。
戯言遣いでもない、青色サヴァンでもない、ましてや人類最強でもない……
私が初めて、本当の意味で心を赦したあの人が。

渇きかけた涙を拭って、再び開いた狐さんとの距離を一歩、詰めた。


「私の『縁』は切れたんです。
 因果応報とかバックノズルだとかそんなのはもう――『あそこ』はもう、関係ない」


決意と覚悟と堅剛と強固な意志を宿した目を、向けたつもりだ。


「だから私は二度と、戻らない」

「………………」


狐さんは数秒沈黙すると、


「ふん。それがお前の答えか」


狐面の向こうでは、満足そうな笑みを浮かべているような気がした。
気のせいかもしれない。


「それじゃあ、『縁が合わない』ことを願って。さようなら」


逃げるように。そうして私は踵を返した。
その後狐さんがどうなったのかとかはもちろんわからないし知らないけど、
私はとにかく臨也さんのいる新宿のマンションにはやく行こうと、駆けていった。  


▼ 正直言って、これがR15指定に入るのかは不明です。
  やってることはただのキスですが、さあどうなんでしょう……。
  一応、外伝はここで終わりです。が、まだこの物語自体は続きます。
  今回は狐さんのターンでした。やっちゃったんだぜ☆☆な話。
  しかも、夢主のことを「俺の嫁」扱いとは……。まあ、いーちゃんに対して「俺の敵」と言っていたので、それに対を成す形の呼び方にしたかったんです。
  2011/07/02
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