あの青い空みたい
サフィニアはいつも思う。
自分と同じような名前を持つ幼馴染みは、なぜこんなにも見惚れる髪色をしているのだろう、と。

青い髪。
空よりも少し深いその青を持つ人間は、珍しいと聞く。
マリアもそうだけど、このクランZOOにはとても目を引く人たちが集まっている。

いいなあ、と思う。
綺麗。綺麗だ。サファイアの髪は、とても、綺麗。
すばらしいとかうつくしいとか、すべらかだとか、なめらかだとか、絹のようだとか、そんな品詞や例えはいらない。
ただ、綺麗。
それ以外に言葉など思いつかない。

そ、っと触れてみた。
きっと今なら、彼は寝ているから気づかない。
触れても、わからない。
サファイアなら、触れられるのに。あの人にこうすることはできない。なぜか、とても胸がどきどきして、頭が真っ白になって。サファイアもマリアも……みんなが応援してくれているのに、なんだかとても申し訳ない。
サファイアは全世界の女の子が羨むような、くすみもしみもないほっぺたをしている。高い鼻。長い睫毛。整った眉。真一文字に結ばれたつややかな唇。今は閉じられている瞳は……――意志の強さが現れている、蒼穹。髪と同じ色。

さらさらなその青い髪は、本当に手触りがよかった。ずっと触っていたい。触れていたい。……でも、それだけ?

――なにが、“それだけ”なの……?

自分の心の中で生まれたはずのその呟きに、サフィニアは訊き返す。

わけがわからなかった。
なんでだろう、なんなんだろうと首を傾げていると、サファイアの瞼がゆっくりと開かれる。

「……おはよう」

いつもの淡々とした声でそう言われ、ハッとサフィニアは我に返り、

「あっ……ご、ごめんなさ……」

手を彼の髪から離そうとした。

が、

「……いい。そのまま」

と手を重ねられてしまえば、サフィニアは少し目を見開いて、しかし黙り込むしかなかった。
強要するような声音でもない。従わずにいることもできた。
けれどサフィニアはそうしなかった。
なぜだか酷く、サファイアが悲しげに見えたから。
その強い意志の光の灯る瞳の奥に、寂しげな心が見えたから。
気のせいかもしれない。
それでもよかった。
ただなんとなく、サフィニアとサファイアは言葉も交わさないまま、お互いに見つめ合っていた。
やがてサファイアが目を閉じる。
二度寝でもするのだろうか。
と思った彼女の目の前で、彼は唇を僅かに動かして何かを言った。

「……?」

サフィニアは不思議そうな表情をしたが、サファイアがそれに答えることはなく。
再び青色の目を開け、ただ彼女の頭を撫でただけだった。


▼ これも一年前のもの
  おそらくサファイアは、『愛してる』か『好きだよ』といった類の何かを言ったんじゃないかなあと思います
  2011/03/09(2012/07/20up)
  title:precious days
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