12/22 歌 (1巻以降2巻以前)
「歌も聞き惚れるけど、あやめちゃんの声って綺麗だよね」
部室にて。珍しく空目はいまだ来ておらず、そこにはあやめと杏樹の二人だけがいた。
うっとりとした表情で呟いた杏樹に、あやめは照れたのか顔を赤くしつつ、戸惑ったように、
「そっ……そんなこと、ないです」
と謙遜する。
空目が来ていないことをいいことに、杏樹はあやめに歌を歌ってもらったのだ。
まあそれも、異界には影響しない類の普通の歌だが。
あやめの声は本当に綺麗だと思う。
世辞ではない。
あやめの声音はソプラノ。透き通った、どこまででも響いて伝わるような声。
異界から空目を守る時に歌う歌にも、戦闘そっちのけで聞き入ってしまうのだから、
本当にあやめはすごい。
うんうん、と杏樹は一人で頷き、そんな彼女を不思議そうに首を傾げて見るあやめ。
「すまない遅れた」
「やっほー! 二人とも!」
「ういーっす! 波崎にあやめちゃん!」
「……あんたたち、何してるのよ」
「木戸野に同感」
そこへいつもの文芸部メンバー――空目、稜子、武巳、亜紀、俊也が入ってきて。
彼らに、あやめの歌と声の流麗さについて杏樹が熱く語り始めるまであと三秒。
▼ すっっっごく短いですねこれ……
2010/08/18(2013/12/02up)
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