Starry☆Sky&夏目友人帳→ひとりぼっちのお姫様 | ナノ
01 世界を知ったのはいつのことだったか

幼いころから変なものを見た。
おそらくそれは、妖怪と云われるものの類。





いつしか他人と係わることさえなくなっていたことに気づいたのは、一体いつだったろう。
もうその時のことを忘れてしまうくらい昔のことか、
それとも、そんなことは覚えている価値もなかったのか。

もともと他人と関わることが得意ではなく――苦手になっていた私は、一風変わった高校に入学しても、全く人間関係を広めようとはしなかった。
入学して、一年経った今でも、それは変わっていない。

独りがいい。
他人と係わったところで、何になる。
相手に迷惑をかけたり嫌いになられたりしないように、努力しなければならない。面倒だ。
だから友人を作らない。
そういうことでは、私の場合、ない。

ただそんなことを思わずに。友人を作らないことに理由なんてない。
それが私にとって普通で、自然だから。

私の友人は、彼だけでいい。





私の席は、空に近い。
廊下側じゃなくて、窓際だから。それも一番後ろ。

授業の終了を告げるチャイムが鳴った。

今日も陽日先生の授業を、右から左に聞き流した。
時折ノートをとりながら、しかし目線はほとんど外。

授業が終わった後の教室というものは、騒がしい。
そしてなぜか今日はいつになく。
どうしたものかと前へ視線を向けると、学級委員が黒板に張り紙を張っていた。

…………席替えか。

どうしてこんな面倒くさいイベントを、学期ごとに繰り返さなくてはならないのだろう。
……でも、月一でやっている高校もあるらしいから、それにくらべるとまだマシだ。
担任が勝手にあみだくじをつくって、適当に名前を書いて決定する席替えは、
もちろんこの神話科の生徒にも評判が悪い。
黒板の前に群がっている男子生徒たちを見て、はあ、とため息をついた。





そんなふうに思っていたのがいけなかったのか。

…………どうしてこうなった。

一番廊下側。その列の最も前。
そこが私の席になってしまった。

誰かが後ろにいる席は嫌だ。
『見られている』、という感覚が常に付き纏うから。

移動させた机と椅子を改めて整え、席につく。
するとすぐに、四時限目の授業が始まった。





放課後。

私は特に、部活に入っているわけではない。
そして、勉強ばかりしているわけでもない。
しかしつまらない授業が終わり、掃除も終えた、この時間はいつも図書館にいた。
鞄を隣の椅子に置き、その中から筆箱とノートを取り出す。
それらを長机の、目の前のスペースに並べると、筆箱のチャックを開けてシャープペンシルを取った。

静かな空間は、好きだ。
何も邪魔をするものがいないから。
何の悪意も聞こえてこないから。

だから、好き。

ずっとここにいたいと思うほど。
そんな感覚、とうの昔に置いてきたはずだったのに、なぜか思い出してしまう。
感情を抱くことで、どれだけ自分が傷ついたか。どれだけ、周囲の人たちが傷ついていったかを。

『空色設計士』

そう名づけられた、私オリジナルの小説。

タイトルからも察することができるように、異世界を舞台にしたファンタジーだ。
主人公は、15歳の少女。
彼女の叔父は、『空をつくる』設計士だった。しかし彼はこの世にはいない。
少女に『空をつくる』ことが、どんなに素晴らしいかを教えた彼は、病で命を落としたのだ。

この世界に名はない。

私が今いる世界に、名前がないように。
否、その世界に名はあった。

けれど、名前を奪われ、世界が色を失った。
その一つが『空』というわけだ。
そしてその色のない空に、色をつけ、『空をつくる』のが空の設計士(メイクリスト)。

一般の、家などの設計士はデザイナーと呼ばれ、区別されることが多い。

叔父の死をきっかけに、空の設計士を目指すことを決意した少女の、成長の物語である。

その物語にはおそらく、こんなふうに生きてみたいという私自身の願いがこめられているのだろうが、自分でもそれが何なのか理解できないでいる。
わからなくても別にいいんじゃないかと、自分で思っているからだろう。


▼ 2011/05/08
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