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02 駆け抜ける季節

キーンコーンカーンコーン……

四時間目の授業終了を知らせるチャイムが、早乙女学園に響いた――





そのとき、

「だああああああああ!!!」

「おおおおおおおおお!!!」

「だむううううううう!!!」

Sクラス、Aクラスからそれぞれ一名、二名が勢いよく廊下に飛び出し走り出した。
その姿は瞬く間に遠くなる。
各クラスのクラスメイトたちはそれに対して苦笑気味だったり呆れた視線を寄越したりしたあとで、各自昼食を摂るため動き始めた。





「悪いが御影!聖川ダム!お前らにさおとメロンパンは渡さねえ!!」

「いやいやいや!それはこっちの台詞だ翔!!最後に笑うのはこのおれだ!」

「俺は聖川ダムではない!聖川真斗だ!そしてさおとメロンパンは誰にも渡さん!」


廊下を高速で走り抜け(←良い子はまねしちゃいけません)、チャイムが鳴るなり教室を飛び出した三人――翔、御影、真斗の行く先は購買。
走り続けている最中である上の会話でもわかるように、目的のものは人気商品さおとメロンパンである。

「ちょおおっと三人ともー!廊下は走っちゃだめよーー!!」

そんな林檎先生の声も、彼らにとってはどこ吹く風……というかそもそも耳に入ることはなく。
やがて翔、御影、真斗は購買に辿りついた。
全速力でここまで走ってきたため、時間にしてまだチャイム後1分。
なので購買を訪れている生徒も少なかった。
しかしまだ油断はできない。
こういうときに一時遅れて他の生徒がなだれ込んでくるときがあるのだ。

「「「おばちゃんこれ!!!」」」

カウンターで売っていたさおとメロンパンを、それぞれ二つずつひったくるように奪い取り、同時に三人はお金突き出した。

食堂のおばちゃんならぬ購買のおばちゃんは、

「あらあらまあまあ。今日も元気がいいわねえ」

などとのんびりと答えながら、翔、御影、真斗から代金を受け取ったのだった。





「メッメ メロンパン〜 さおとメロンパンおっいしっいな〜♪」

「何だその歌は」

翔は那月と一緒に昼食を食べるということだった(そうしないと泣きながら那月に追いかけまわされるらしい)ので、中庭の芝生に腰を下ろしている御影と真斗とは別行動だった。

かくいう御影と真斗も、普段はAクラスの面々と昼食を共にしているのだが、今日はなんとなく二人で木陰の下でお昼を過ごすことにした。
(それを音也に伝えると、『(´・ω・`)』という顔文字が返ってきて、御影がその可愛さに『ふぐおおおおおっ』と悶えたのは余談である。)

――そう、丁度この場所は、大きな木が背にあるため、陰になっているのである。
夏の近づくこの季節。
真夏にはまだ遠いものの、額に少し汗をにじませるほどの暑さを、この陰は遮ってくれる。

「んー、さおとメロンパンの歌」

開けた袋からメロンパンの頭を出し、はもはもとメロンパンを食べる御影。

「さおとメロンパンの歌……だと……?」

そんな御影と同じように、袋を完全に取っ払わずに手を汚さないようにしてだむだむとメロンパンを咀嚼する真斗。

木陰の下(もと)、イケメンが二人してそうやってメロンパンを食べている姿は、ある意味目の保養かつ癒しである。

ちなみに、御影と真斗は『さおとメロンパン同盟』を結んでいる同士でもある。

「(さおとメロンパンへの)愛の洪水が、止まらないほどに……!!」

「……(さおとメロンパンに)ノッカーウ!!」

「なぜにて!!」

「いやなんとなく」

ある意味電波な会話を繰り広げつつ、二人はメロンパンをもぐもぐと食べ続け、やがて完食した。

「しかし……このメロンパンは何個食べてもいけるな」
今日は二つしか買わなかったが。

うんうんと深く頷いて呟く真斗に、

「そうだな!!何個でもどんとこいだ!!」

御影が、ぐっと拳を握って応える。
そして背後の木を避けるようにして、ぼふりと芝生の上に寝転んだ。

「ふおあ……。ねむ……」

仰向けになっても、木の葉が丁度頭上にあるのでただその隙間から太陽の光がキラキラと漏れ出るだけだった。
青空が見えないことに少し眉間に皺を寄せた御影だったが、そもそも見えたとしても、それは太陽の下(もと)に身を曝け出す自殺行為だということに気づき、ひとまずこれで大目に見てやることにする。

――しかしまあ、昼寝をするには丁度よい環境になっている。

「食後は……すぐに寝ては……体に悪影響なのだぞ……」

かくいう真斗も、木を挟んだ向こう側にいつも間にやら寝転んでいた。
瞼が下りてくるがハッとしたように開いて、けれどまた眠くなってきて瞼が下りるの繰り返し。

……珍しいなあ、こんな真斗。

御影は半分眠りかけの頭の中でそう思い、口の端を緩める。
トキヤに似ていつもクールな真斗は、隙がない。そしてどこか、他の人間を寄せ付けない雰囲気が少なからずある。本当の自分を、表に出すこともないのだろう。
だからだろうか、今、『冷静沈着ではない聖川真斗』を見ることができて、嬉しいのは。

木漏れ日が星のように降ってくる。
いまだ春の面影のある優しい風が、眠りに落ちた二人の髪を撫で、過ぎ去っていった。


 駆け抜ける季節 



▼ 最初に翔ちゃんを出した意味はあったのだろうかと思いつつ、そのままにしてアップ。とりあえず、夢主とダム様の話。結構ギャグ満載でした。ツッコミ役(主に翔ちゃん)が仕事をしなかったのでボケ殺しの回になってしまいましたが……みなさんはツッコんでくれました……よね……?
  ちなみに、作中の「愛の洪水が〜」と「ノッカーウ!」はキャラソンより(笑)
  では、10000ヒットありがとうございました!
  2011/09/05〜2013/01/31(自作発言等禁止)
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