そう、これが緋の味-claret

※クッションスペース!
 一部グロい感じといいますか……血の描写が出てくるので、苦手な方は読まない方がいいかと。
 読まれるのであれば、その後何があろうとも自己責任でお願いします。


「なあに?くすくすくす」

その女は、幾多もの屍を絨毯のように地に臥せ、その上で嗤っていた。
血だまりの中にただ一人立つ少女。
髪は真っ白。目は紅い。
肌も陶磁器のようになめらかに白く、そして返り血を浴びたその姿は、赤一色に染まるこの路地に、恐ろしいほど映えていた。

「そんなモン壊して愉しいか?」

俺は問うた。
しばしその妖しさに呆気を取られたのは、この際関係ない。
ただいつものように、余裕で狂気で嘲笑うかのような笑みを浮かべた。

「ううん。愉しくないわ。――けど、」

もう一度、彼女は可笑しそうにくすりと笑った。

「貴方が愉しくしてくれるんでしょう?」

「………………」

これは一本取られたな、と思った。
このときの俺は珍しく、ほんの少し目を見開いていたのだろう。
名も知らない美貌の少女は、微笑ましそうに目を細めた。

「貴方でも、そんなふうに驚くのね」

俺のことを幾ばくか知っているような声音。
確かに、こいつなら知っていてもありえるか、と心の内で納得する。
なんとも不思議な奴だ。身体はまるで成熟途中の子供だが、その精神はゆらゆらと揺れ、しかし芯は強い蝋燭のようだ。――そう、蝋燭。その蝋が、気力がとけた時。こいつはどうなるのか。興味が湧いた。

「ククッ。俺にだって感情はあるさ」

喉を引きつらせて哂う。
すると彼女は俺のところへ一歩、踏み出した。

そのまま、二歩。三歩。四歩。五歩。
大きいとは言えない歩幅で近づき、
その距離はほぼない。けれども身長差があるので、少女の顔が丁度俺の胸のあたりに来るくらいだった。

「………………、」

目の前の――おそらく夜兎だろうそいつの雰囲気は、少し不機嫌なものに変わる。
これだけ身長の差がひらけているのが不満らしい。


「面倒です」


雰囲気が、纏う空気が変わった。その高い声は彼女のものだ。
しかし口調も先ほどとは異なっていることに訝しむ。
眉根を寄せた俺に気付いた少女は、くい、とその端整な顔を上げると、

俺の着物の胸倉を掴み、ぐいっと引き寄せた。

「、」


――その距離、0センチ。


柔らかいそれが、いくらか強引に重なった。
鉄の味がした。


「てめえ……」


初対面の奴にこんなことをされる云われはねえ。
何を考えてやがる、こいつは。

「――ああ、誤解しないでください。別に貴方のことが好きだからしているんじゃありません」

じゃあなんだ、と視線で訴えると、

「なんとなくよ」

また口調が変わり、妖艶に微笑んでそう答えられた。

こいつには何か――夜兎という以外に何かがある。
俺は確信して、それと同時に、これからは面白くなるなと口角を吊り上げた。


血生臭い中、何をするでもなく、頭上の満月を見上げる。
隣の紅白色の少女も同じように天を仰いだ。

群青色よりもさらに深い藍色の空に、ぽっかりと浮かぶ月。
それは黄色くも白くも見え、不気味だ。
けれどもその不気味さが似合っている。

誰に、だと?

そんなモン、教えるまでもねえだろう。


( あとから聞いた話だが、 こいつの名は 白い華――なまえ♀と云った )


▼ ……つまり、夢主は白い髪に紅い目の夜兎で、デフォルト名が白華(びゃっか)という名前なわけです。なんだか二重人格っぽい感じですが……まあそれは伏線……のようなものです。続きはないけど、伏線なんです。
そして基本的に、高杉に対しては妖艶な人格が主に出てきます。のちに出会う銀さんに対しては、(子供っぽい)敬語の人格が主に出てきます。本物の名前♀の人格は、多分敬語の方です。  2011/05/26


title:哭
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