23日までのカウントダウン! | ナノ
あと1日/06 last love

――地下牢教室。

極東にある日本という国には、秋雨というものがあるらしいが、この神無月、イギリス(この国)にしては珍しく、今日は雨が降っていた。
しとしとと絶え間なく雨音が聞こえている。

僕はこの暗い場所で、魔法薬を作っていた。

天候により、外に出られない。
そのため、晴れの日は談話室にいるか屋外にいる、いつも無駄に明るい性格のルームメイトのレインが部屋にいた。
そして勉強をしようとする僕にやたらと話しかけた。
鬱陶しいことこの上なかった。
眉間に寄せた皺さえも、このルームメイトには通用しないらしい。
今日という今日は、堪忍袋の緒が切れた。
談話室に行けばいいだろう、なぜ僕の邪魔をする!
と苛立った声を上げると、レインはこんなじめじめした日に、ただでさえ陰気な談話室になんか行きたくねーよ!あんなの『談話』できる場所じゃねー!あーあ!グリフィンドールの談話室に行きてえ……!と答えた。
行きたいなら勝手に行ってこい。
急に怒る気が殺(そ)がれて、ため息と共にそう呟いた僕は。しかし、今、部屋を出て普段は魔法薬学の授業をしている地下牢教室にいる。

あのまま部屋にいたとしても、レインは外には出て行かなかっただろうし。
伊達に2年、同じ寮の同じ部屋で過ごしてはいないので、もうあいつの性格は完全に把握しているようなものだから、そうわかるのだ。

運よく鍵が空いていたこの教室に来た理由は特にない。
ただ、なんとなく。
落ち着くだけだ。
誰もいない。何も――聞こえるのは、雨音だけ。
静寂の支配した場所は、好きだ。
己を邪魔する者がいない。
己に指図する者もいない。
なんて居心地の良い場所だろう。

水を張った黒い大鍋の中に、アスフォデルの球根の粉末と煎じたニガヨモギを手順通りに入れた。
ぶくぶくと、水泡が音を立てる。

――ふと、そのとき。
コツコツ、と
誰かの足音が、耳に入った。
それはだんだんとこちらに近づいてくる。
遅くも早くもない、その靴音。
誰だ、
と思ったのもつかの間。


「――あ、杏樹……?」

「あーっ!セブルス!」


二人の声が、教室いっぱいに木霊した。





「もーっ!ずっと探してたんだから!!」

と開口二番に金髪碧眼の同い年の女生徒――杏樹は眉を吊り上げた。
その次に、

「――あれ?……この薬って……もしかして、“生ける屍の水薬”…?」

僕の鍋の中を覗き込み、半ば確信した様子で訊いてきた。

ああそうだ、
と頷くと、「そっか!!セブルス凄いね〜!」

にこにこした笑みでそう返された。
穢れのない、純粋な笑顔。否、真に純粋すぎる笑顔とは、むしろ純粋すぎて恐怖を覚えるだろう。彼女の場合はそう――他人を幸せにする、笑顔だ。
不思議と、悪い気はしなかった。
安心感さえ、湧いていた。
閉じられた心の底から、何かあたたかいものが沁みてくる。
――はじめて、僕の心を解いたのは、杏樹だった。

彼女だけが、僕の本当の大切な、
本当にかけがえのない、人だ。

「……褒められるようなことはしていない」

その笑顔を向けられて、なぜか妙に、顔が赤くなってきた。
杏樹を直視できずに、顔を逸らして呟く。

「ううん、すごいの!わたしがそう言ってるんだから、セブルスはすごいの!」

彼女は、僕にはないものを持っていた。
多くの友人。
聖人のような人格。
人々を幸福な気持ちにさせる笑顔。
知識や優秀な頭脳。
眉目秀麗な容姿。
恵まれた周囲の環境。

だが、それを羨ましいとは刹那にしか思ったことはなかった。
彼女のようになりたい、などということは、一瞬たりとも思ったことはなかった。

なぜなら。
――なぜなら、ほかの誰でもない彼女……杏樹が、僕を『僕』として認めてくれていたから。
『今のセブルスで』いいのではなく、『今のセブルスが』いい。
そう言ってくれたから。

だから、杏樹、僕は、君を――





ずっと、守る。
守って、守り抜いてみせる。

未来に、何が待っていようとも。

今も。昔と同じことを思っている自分がいた。
もういい年をした大人だ。
私も彼女も、自分の身くらい自分で守れる。
守れる、だろう、杏樹。


私がいなくとも、もう、心配はないだろう?


――嗚呼、もういいか、
          私が、僕が、


君の隣にも、君の傍にも、君の歩く先にも後にもいなくなってしまっても。


  ――私を許してくれ


こんなふうにしか、君を愛せなかった私を、許 して、 くれ



▼ シリアスううううう!!
  と、いうわけで。カウントダウン6日目は、待ちに待ったセブルスとの話!
  今日は水曜日でいろいろと用事が立てこんでいるので、細かいことはあとがきに書けませんがご勘弁を!!えっと、この最後のセブルスの言葉は、ハリポタ最終章のネタバレ的なものになってます。ハリポタ原作を読んでいる方の中にはわかる方もいるかなーと信じています;; 2011/06/22
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