あと2日/05 fly!in the sky of summer!
――それは夏休みのある日の早朝。
「っ!ごめん、ジェームズ待った……?!」
「いや、そんなことはないよ!」
僕は、今日。
こちらに小走りで駆け寄ってきた金髪碧眼の少女――杏樹と、ゴドリックの谷の空を飛ぶという約束をしていた。
……と言っても、何年も前からとか何カ月も前からとかのそれじゃなくて。
今回初めてここ、ゴドリックの谷の僕の家に滞在することになった杏樹に、何かプレゼントのようなものをしたかったのだ。シリウスやリーマス、ピーターには内緒で。
この谷は、山にぶつかるまでは辺り一帯拓けており、自然の芝生が青々と茂り、早朝と相まって夏の暑さを幾分か和らげてくれている。
さああっ
爽やかな風が吹き抜けた。
杏樹の一つにまとめた金色(こんじき)の髪が舞い、それを太陽の光が通過し眩く輝く――、まるでそれは何か、言いようのできない神秘的なもののように感じた。
サファイアの瞳も、普段よりいっそう蒼く青く、澄んだ色をしていた。
とても、綺麗、だ。
――はっ!いやいや!浮気をするな自分!
僕はエバンズ一筋だからね!!
ああもうリリー・エバンズ。彼女の美しさと言ったら……!!言葉にすれば他人にわかってしまうのだから、口に出すことすらも惜しいよ!
「……あーえっと、ジェームズ……?」
杏樹が苦笑していた。
「リリーのことを考えるのはいいけど……、早くしないとシリウスたち起きてくるよ?」
!
まさか僕が、今エバンズに思いを馳せていることがバレたとは……!
さすが杏樹!恐るべし!
「そっそうだね!じゃあさっそく、行こう!」
僕は杏樹を箒の後ろに乗せた。
風は相変わらず気持ち良い。
視界も良好!
さあ、飛べ!
*
「わあっ!!」
僕の体に手を回している杏樹が、エバンズだったらいいのになあとは思うけど、それを具現化すればきっと杏樹に半殺しにされるなあと、内心空笑いしつつ、背後で歓声を上げる彼女に声をかける。
「――すごいだろ?杏樹、これが、僕らの住んでる世界だ!」
だんだんと上昇する。朝靄の冷気が興奮した僕らの頬を冷やしていく。
ゴドリックの谷に不規則な位置にに立ち並ぶ家々は、もう遥か彼方下方。小さくしか見えなくなっていた。
夏の朝の冷涼な風を切り、箒を操り前へ飛ぶ。
上流から流れてくる川も遠くなり、線にしか見えなくなってくる。
周囲の山には頂上を中心にして雪が積もっており、美しい。
山の麓に広く群生している花々の色が、この高い空から見えることも、また風流。
目の前に視線を上げると、これ以上になく澄んだ青い空。
後ろの少女の瞳と同じ色をした空が、いっぱいに広がっている。
僕らを包み込む、母なる地球の母なる空。
地上から見るよりも、ずっと、綺麗だ。
そんな単純な言葉しか出てこない。
そんなありきたりな言葉しか、生まれない。
それほどに圧倒されて。
もうそれでいいんじゃないかと思う。
使い古された、手垢のついた言葉でいいじゃないか!
それがいいんだ!
「……うん……!わたしたちの生きてる世界って、こんなにも素晴らしいんだね!」
大空に、僕らは箒の軌跡を描いた。
*
そのときの杏樹の表情を見たくて振り向こうとしたけれど、箒の操作を誤って墜落しては元も子もないと思って――。
きっと彼女は、笑顔だった。
空に負けないくらい、その広大さや純粋さに負けないくらいに、綺麗で輝いていて晴れやかな笑顔だったのだろう。
――それを、見られなかったことが、僕は、今でも悔しい。
▼ なんか……最後、笑顔、っていう点がリーマスの話と被ったかな……と思ったり。あと終わり方も少々……;;。
ま、まあこれもこれでいいんじゃないかな?と思うことにします!
カウントダウン5日目、はジェームズとの話。タイトルの英語は、文法的にあってるかどうかは気にしないでくださいね!あと、この書き方だと解りにくいかもしれませんが、シリウス・ピーター・リーマスも、ジェームズの家に泊まりにきてます。
最後に、纏まっていない文章ですが、読んでくださりありがとうございました!
2011/06/21
←
戻る
[ 6/8 ][*prev] [next#]