23日までのカウントダウン! | ナノ
あと4日/03 my longing

本日午前の最後の授業と、午後の最初の授業の間の時間。
つまりは昼休み。
外の芝生にて、目の前ではあまりよくない光景が広がっていた。
それから現実逃避をするため、もしくはそれを止められない自分に嫌悪するため、ぼくは視線を逸らす。
ふと渡り廊下に目を向けると、大きな鍋を抱えて移動している見知った金髪碧眼の少女を見つけた。

「あっ、杏樹……!」

名前を読んだぼくの声に気がついたようで、彼女は頭の横で一つにまとめた長い金色の髪を揺らして笑みを浮かべて、

「ピーター!」

と、こちらに駆け寄ってきた。
大鍋を抱えたまま小走りにやってくる杏樹を見ているのは、転びやしないかと本当に冷や冷やした。
でも、それよりも今は、

「スッ、スネイプが……」

ぼくは自身の後ろの大きな一本の木を指差す。
そこでは三人の男子生徒と、一人の男子生徒が杖を向けて対峙していた。
ぼくがみなまで言い切る前に、杏樹はぼくの表情とその様子を見て察したらしく、

「うん、わかった」

と頷いて、大鍋と共に抱えていた教科書をぼくに預けると。
その大きな鍋を頭の上に掲げて、

「こおおおおらああああああ!!」

と叫び声を上げ、だだだだだだと四人の男子生徒――ジェームズ、シリウス、リーマス、スネイプの元に勢いよく走って行った。
やがて杏樹が大鍋を振り回して、ジェームズたちを蹴散らしているのが見えた。
スネイプは煮え切らない表情で、顔を歪めているのがわかる。

――やっぱり杏樹はすごいなあ。

しばらく見ていると、少し離れたところに野次馬が少し増え、騒ぎを聞きつけたエバンズが、杏樹やジェームズたちの方へ走り寄って行っていた。

――ぼくは、こんなふうにはできない。

純粋に羨ましいと思う。

涼しい風が、木々の葉を巻き上げて過ぎ行く。
さわさわと、芝生が踊る。舞い上がった木の葉も踊る。

――杏樹みたいに、なれたらいいなあ。

なぜか清々しい心で、そんなことを思えた。
それはきっと、ぼく自身によって。どうにでも変えられるものなんだ。





――だけれどそう、ぼくは。
彼女のようには、なれなかった。

それは遥か昔に過ぎ去った、遠い日の出来事。


▼ この中編のモットーは、『過去』と『現在』です。
  基本的に『過去』――親世代の学生時代を主体としながら、最後の*のあとの文章には『現在』のことが描写されている。そして最初の一話以外、カウントダウンの最後まで、誰かの一人称で物語を進めて行こうと思っています。 2011/06/19
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