あと5日/02 teatime and you
――それはある日の昼下がり
「リーマス!!」
僕の部屋のドアを勢いよく開け、駆け込んできたのは金髪碧眼の少女――杏樹だった。
突然のことに驚いて目を見開く僕に、彼女は自身の後ろに回していた手を突き出した。
「お茶しない?」
それはカップとクッキーと紅茶の葉がそれぞれ中に入っている袋だった。
*
目の前の、ジェームズ用のベッドに座っている杏樹は、本当においしそうに紅茶を飲んでいる。
『今わたしはとても幸せ』
そう体現しているといわんばかりの表情だった。
見ているこっちも、思わず笑みが零れてしまう。
部屋いっぱいに、漂うアールグレイの香り。
そこに混じる、焼き立てのクッキーのにおい。
おそらく杏樹が焼いてきたのだろう。
ふとそれらが入った袋に目を向ける。チョコチップを散りばめた、また、ストロベリーを練りこんだ――そんな様々な味が楽しめるクッキーが、そこに入っていた。
その中の一つを手に取り、一口齧る。
サクッ
という、小気味いい音がした。
やがて咥内に広がるふんわりとした感覚。
なぜか心が満たされる気分になる。
まるで魔法のクッキーだ。
そこにいるだけで、周りを笑顔にしてしまう不思議な少女、杏樹が作ったからなのだろうか。
……少し、違うかもしれない。
きっと、彼女はそう――味わう人を想いながら作っている。
何をするにも、相手に必ず想いを馳せている。
だからこそ、このクッキーはおいしくて。
――だからこそ、彼女は僕らを笑顔にする。
「いつもありがとう、杏樹」
そんな感謝の意味を込めて告げる。
――いつも、僕らを笑顔にしてくれてありがとう。
そうすると杏樹は、僕のその言葉の意図を掴めなかったようで、きょとんと首を傾げたあとでこう言った。
「……なんだかよくわからないけど……。どういたしまして!」
*
――その笑みすらも、僕は好きで。
ずっといつまでも、永遠に覚えていたかった。
▼ というわけで。
カウントダウン二日目は、リーマスとの話です。
……文才のなさはいつも通りなので、気にしないでください!
2011/06/18
←
戻る
[ 3/8 ][*prev] [next#]