夢から覚めたら、そこに広がるのはいつもの天井
辺りを見回しても、そこはどう見ても自分の部屋だった。
自分の荒い呼吸が部屋に木霊してやがて消えた。

少女は汗ばんだパジャマを脱ぎ、シフォンのワンピースに着替えクリーム色のカーディガンを羽織った。

そしてドアノブに手をかけ開けると、鼻をかすめる良い香り

リビングからコーンポタージュとコーヒーそれに香ばしいパンの香りが漂ってきた。

少女は足早に階段を降りていく、トントンとリズム良く奏でられた足音は一種のBGMのようなものだった。

「おはよう、イヴ」

車椅子に乗った女性はイヴと呼んだ少女を椅子に座らせて、朝食を乗せたトレーごとテーブルの上へと置いた。

『おはようご、ざいますお母さっ・・・じゃなかった!
ラケル先生』

「ふふっ、まだぎこちないわね」

ラケルは目を細めて彼女を見つめる。
まるで我が子を見つめるかのように。

『昨日から言い始めたんですけどなかなか・・・』

パンを一口の大きさに千切り口へと運ぶ。
咀嚼(そしゃく)する音だけがリビングに響いた。

「これから少しずつ慣れていけばいいのよ
ゴッドイーターのことも、ブラッドのことも・・・」

イヴのそばに移動し、彼女の右腕にラケルの手が触れ、優しく撫でられる。

『そうですね・・・』

「それじゃあ30分後に適合試験を行うから、それまでに準備をしておいてね」

そう言うとラケルはテーブルに置いてあった一冊の本を手にして、リビングを後にした。

『はい!』

イヴはラケルの背中を見送り、食器を洗い、片付けて準備をするため部屋へと戻っていった。

大きな不安と大きな希望を抱えて・・・。





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