『いよいよ・・・か。ダメだぁ、やっぱり緊張する!』
特殊部隊ブラッドの制服に着替えたイヴは鏡に写る自分の姿を見ては、緊張とこれからゴッドイーターとして生きていく自分への鼓舞を繰り返していた。
『えっ、あと2分!?急がないと・・・!』
時計の針は6の手前を指していた。
秒針が狂いなく進んでいくなかで、彼女は緊張が拭いきれないまま慌てて自室を出た。
『えぇっと、エレベーターは・・・。あっ、すいません乗ります!!』
閉まりかけた扉に一心不乱に飛び込んでいく。
『(間に合わない!)』
手を伸ばして彼女が思いかけたその時
グイッと腕を引かれ、エレベーターの中へと吸い込まれていった。
『はぁ・・・はっ、んっ・・・?(あ、あれ?私・・・エレベーターに乗ろうとして・・・その後は?)』
突然のことに息切れも相まって混乱し、状況を把握しきれなかった。
少しずつ酸素を取り込み、落ち着いてきた頃には今度は頬を紅く染めた。
何故ならば彼女は現在進行形で男性と密着しているからだ。
動こうにも腰に腕が回されているため出来ない。
『あ、あの・・・もう大丈夫ですから、その・・・』
エレベーターに乗せてくれた人に向かってこう言うのは気が引けた。
だがいつまでもこの体勢でいるわけにはいかなかったので、優しい声色で『離していただけませんか?』と続けようとした時
「すまない、余りにも急いでいたようだから君の腕を思いきり引いてしまった・・・。痛くないか?
それに転ばないようにと腕を回したのだが、驚かせてしまったな・・・」
優しく落ち着いた声
『そんな・・・謝らないでください。腕は痛くありませんし、もとはといえば私が駆け込んで来たので・・・』
俯いていた顔を上げるとそこには端正な顔立ちをした青年がいた。
イヴの翡翠色の瞳が青年の灰色の瞳をただ見つめていた。
「ん?どうかしたか?」
『あっ・・・すみません!その、綺麗だなあと思って・・・』
チーンッ
エレベーターが目的地の階に到着した事を告げた。
『でっでは、私はこれで失礼します!!』
ペコリと一礼した後、扉が開くと同時に勢いよく飛び出して目的地へと向かっていった。
「綺麗・・・?」
青年はどこに向けられた言葉なのか考えながら、小さくなっていく彼女の背中をずっと見つめていた。
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