神機整備士としてフライアにやって来て、数ヶ月が経ったある日のことだった。

first nameがいつものようにブラッド隊員たちの神機のメンテナンスを行っていた。
ボードの上に敷かれた表に異常無しを示すチェックを書き込んでいく。

『うん、オッケー。異常無し!っと
えーっと、後はロミオ君の神機か。どれどれぇ・・・』

ドクンッ

『あれ?何だろう・・・この感じ・・・?』

ロミオの神機を見た瞬間に足が止まった。

『(凄く怖い、とても嫌な・・・)』

彼の身に何かが起こると彼女は感じた。それも悪い方向に

『(ロミオ君の身に何かが起こる!早くに知らせなくちゃ!!)』

いてもたっても居られず、手に持っていたボードとペンを放り投げ、メンテナンスルームを飛び出して行った。

『はぁ・・・はぁっ、きゃっ!』

ドンと何かとぶつかる音がして尻餅をついてしまった。

「あ!悪ぃ、大丈夫、か・・・!」

『ごっごめんなさい!大丈夫です、ありがとうござ・・・!』

差しのべられた手を掴んで起き上がり、お礼を言おうと顔を上げた。

そこには

『ロミオ君!!』

黒い防護服に身を包んだ彼が居た。

「!どうしたんだよ、そんなに慌てて・・・」

『今は、外に出ちゃ駄目・・・!』

「何言ってんだよ!?じいちゃんとばあちゃんたちを見殺しにしろって言うのかよっ!!?んなこと出きるわけ・・・」

『お願いっ!!!』

「・・・っ!」
突然の彼女の大声にびくりと身体を震わせ、
first nameの懇願の声はフロア内に響き渡った。

『もし、今出ていったら・・・し、死んじゃ、くっ・・・うぅっ』

語尾が徐々に弱くなり、言い終わる頃には嗚咽でかき消されていた。

「バッカだなぁ、first nameは」

『なっ・・・私はロミオ君のこと心ぱ・・・っ』

気がついたら彼に抱き締められていた。
そして優しく頭を撫でていた。

「俺はブラッドの一員なんだぜ?そう簡単にやられるわけねぇよ、それに・・・」

抱き締めていた力が弱まったかと思うと、チュッと唇に触れるだけのキスをされた。

「未来のお嫁さんの為に生きて帰らなきゃって、じいちゃんとばあちゃんに約束したからさ・・・」

はにかむロミオ。
それを見ていたfirst nameも自然と笑顔になっていた。嬉し涙をこぼしながら

『そっか・・・そうだよね。今までもこうして励ましくれて・・・帰って来てくれたもんね!』

「よしっ!じゃあ行ってくる!!」

彼女の頭をポンポンと撫で、立ち上がりメンテナンスルームへと足を進めていく。

『ロミオ君!』

「ん?」

彼が歩みを止めて彼女の方へと顔を向ける。

『・・・行ってらっしゃい!!』

少し躊躇った後でfirst nameは微笑みながら言うと

「おう!」

彼は右手を強く握り締め、ガッツポーズで応えた。

ロミオの背中が段々小さくなっていくのを見詰めながら呟いた。

『いかないで、なんて言えないよ・・・あんな笑顔で言われちゃったら』

再び込み上げてきた涙を拭いながらいつまでも彼の帰還を待っていた。

愛しい人よ、行かないで
私を置いて、逝かないで


いかないで


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