ああ、吐きそう
甘ったるくてベトベトするアイツが大嫌い!!

「first name・・・?」

極地下技術開発局ブラッド隊長ジュリウス・ヴィスコンティは気まずい状況に置かれていた 。
回復錠が切れたわけでもなく、アラガミに囲まれて窮地に陥ったわけでもない。

彼の視線の先には俯きながら自分のケーキをみつめる恋人、first name
よく見るとケーキは一口しか食べていない
一体どうしたのだろうか。
ジュリウスは出来るだけ思い当たる節を彼女に尋ねた。

「具合が悪いのか?それともあの日か?ああ、やはりダイエッ」

バンッ

最近の彼女はお腹回りを気にしていた、命のやりとりが要求される神機使いにとっては致命傷だ。
隊長として恋人として、よかれと思って放った一言がまずかった。

彼女が思いっきりテーブルを叩くと

『・・・過ぎる!このケーキ、甘過ぎる!!』

予想していた言葉と違い、混乱する頭の中で必死に理由を探した。

何? first nameって甘い物が好きなはずでは・・・

『このケーキのクリーム、甘ったるくてベトベトするんだもん・・・』

そうだったのか。
そういえば前にナナが極東支部のラウンジで

「あふぁいもぬずきのふぃとぬなかにふぁ、あふぁすぎるもぬふぁひがてなふぃともいるみたいだひょ!(甘い物好きの人の中には、甘過ぎる物が苦手な人もいるみたいだよ!)」

口一杯にケーキを頬張り、口の回りにべっとりとクリームを付けながら言ってたのを思い出した。
あの時のナナは、かなりの印象的で忘れたくても忘れられない。
おまけに何故彼女の発言が理解できたのかすら分からない。

成る程、と心の中で納得すると彼女に顔を向け

「すまないfirst name、気付いてやれなくて」

憂いを帯びたダークブラウンの瞳をfirst name
に向け、唇に付いたクリームを拭う。

『私の方こそ、ちゃんと言ってなくてごめんなさい・・・ 』

first nameを抱き締めながら唇に触れるだけのキスをひとつした。

キスは丁度良い味だったそうな。


甘過ぎた


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