小さい公園の錆び付いたブランコ


「・・・ここどこよぉ。」
猫を夢中になって追いかけているうちに、気がつけば見慣れない景色。
道なんて猫をずっとみてて覚えてない。
ああ、帰れるかな。
そんな私の不安をよそに、猫はどんどん進む。
私についてこいとでもいうかのように振り返ったその後も、きちんとついてきてるか確認するかのように猫はなんども振り返った。
そのたびに、私は
「大丈夫、ついてきてるって。」
と猫に向かって言葉をかけた。
また猫は、日本語を理解しているかのように、私の言葉に返事をした。
「にゃー」
「・・・ここが目的地?」
どれくらい歩き続けたのかわからない。
「にゃ」
猫は短く鳴くと、走り去って行った。
「え、ちょっと・・・」
もう、いない。
「・・・ここは、公園・・・だよね。」
遊具といえる遊具は、錆ついたブランコとタイヤぐらい。
子供も見当たらない。
時計を見るともう4時だ。
・・・猫を見かけたのは2時前だから、気づかないうちに大分遠くに来てしまったようだ。
「あー、どうしよっ。」
弱ったなぁ。
私が通ってきたはずの道を振り返っても、私の知っている景色はどこにもない。
ギィッ
「・・・?」
静かだった公園に響いた音に、顔を向ける。
ギィッ
ギィッ
ブランコだ。
ブランコに人がいる。
って・・・
「あ、中沢。」
「山口くん!?」
クラスメイトの山口くんだった。
「へぇ、この公園に人いんの久しぶりに見た。
中沢の家このへんなの?」
ああ、やっぱり。この公園は存在しているだけで、あまり使われてないんだ。
「ううん。
散歩してたら気がついたらここにいて・・・」
高校生にもなって、なにやってんだって話ですよね。
うん、私も反省はしてるんだ。ほんの少しだけど。
「じゃぁ、散歩ってことはこっから少し離れたとこってこと?」
「それが・・・」
私は山口くんに今までのことを話した。
野良猫を見つけてずっと追いかけてたら、ここについたこと。
猫を追いかけ始めてから2時間でここまで来たこと。
帰り道がまったくわからないこと。
「・・・馬鹿だろ、お前。」
「・・・認めたくないけど、きっとそうです・・・。」
予想通りというか、なんというか。
山口くんの口からは呆れたという言葉しか出てこない。
「仕方ねぇな。
家どこだ?」
「え?あ、」
尋ねられて、住所を言う。
「また、随分遠いとこから・・・。
わかった、お前がわかるとこまで連れてってやるよ。仕方ねえ。」
「え、あ、ありがとう!」
予想外の言葉に驚く。
「ま、クラスメイト困ってのにほっとけねーしな。」
「山口くんって、ホントはいい人なんだね・・・。」
「ホントはって何だ。ホントはって。」
「あ、や。その・・・。」
「・・・ほら、行くぞ。」
「うんっ。」
私は、目の前の私よりもちょっと広い背中を追って歩き始めた。

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