毒花繚乱 | ナノ


おっすオラ山崎。テスト帰りに駅中の○1○1に寄ったのはいいが、なんとみょうじがいるじゃねーか。原と瀬戸に「お前は単独で花宮みょうじに接触するな余計なことして引っかき回すなこっちにしわ寄せがくっから」と耳が酸っぱくなるほど言われたから、とりあえずみょうじがいる店とは反対側の店の商品棚の影に隠れる。俺の背後から現れる人たちが持っている袋にピストルを形作ったような手があることから、どうやらここは西急ハンズのようだ。あとでシャラシャの赤ペン買わなきゃ。


…それはそうと、みょうじは何しに来たんだ?学校帰りにショッピング☆ってガラじゃねーだろあいつ。みょうじのいる店の看板を見上げてみる。えーっと…あぁ?なんだよあれシャレオツにくるんくるんさせすぎて読めねーよあの筆記体。日本人ならその下のポップみたいに平仮名か片仮名で書けやバーカ…ってポップに片仮名あんじゃん!!えーっと…


バレンタインフェア開催中!!2月14日は女の子にとって特別な日!!キュートなチョコで彼のハートをわし掴み☆


「………」

トゥルルル…

「あっもしもし原!?」
「んだよザキ俺今ガム一生分噛みながらマリカーやってて忙しいんだけど」
「テスト中に何やってんのお前!?」
「は?テスト?バッカお前あれだぜ?俺らテスト終わった瞬間に死ぬんだぜ?大人しくオベンキョーなんてやってられっかよ…ってあっテメッ…くっそバナナの皮で転んだわーうーわないわー」
「だっせ」
「…ワークならやんなくて大丈夫だぜ、どうせ死ぬし」
「お前さっきからなに言ってんの!?そうじゃなくて!!大変なんだよ!!」
「ハー?ピーチのパンチラ見ちった?あー俺はねーどっちかっつーとデイジーのが好み…」
「みょうじがチョコレート専門店で2月14日に彼のハートわし掴みしようとチョコ選んでる」
「あー…いいんでね?どうせ俺ら2月14日まで生きてねーよじゃーねー」

ブチッ…ツー…ツー…ツー…


え、うそん…原アイツ…うそん。仕方ねぇ、俺だけでもみょうじのバレンタイン大作戦を見届け…あれ?あいつ誰に渡すの?花宮?なワケねーし…古橋!?古橋だな!?ぶっ部内恋愛かよーーー!!!みょうじと古橋とか…っ!!いやいやあいつも女だもんな、俺は応援するぞみょうじ…!!


「ん?もしかして花宮んとこのマネージャーとちゃう?」


そうだ、バスケ部といったらキャプテンとマネージャーが付き合うのがお約束だが死んだ魚とマネージャーが付き合うのもありなんじゃねとちゃう?…ん、ちゃう?


「…あ、桐皇の…」
「今吉やで」


妖怪かよぉぉおおおぉおおお!?!?え、ちょ、なんで!?


「…どうも」
「この時間帯にこんなとこおるっちゅーことは今テスト中かなんかなん?」
「はぁ」
「ウチの学校も今テストやねん。テスト期間っちゅーのはホンマ楽でええなぁ?」
「はぁ」
「あ、花宮のお気に入りチョコならコレやで」
「はぁ!?」
「なんや花宮に渡すチョコ選んでたんとちゃうの?」
「ちっがいますよ!!!ふざけないでもらえますか!!!!」
「ほんなら誰に…」
「えっと…その…山崎くん、です…」


えっ……みょうじお前…えっ…。黙って聞いてたらお前…俺にそんな気持ち抱いてたの…?えっ…。はっ、なにこれ…ちょっドキドキしてきた…!!!うそっ、ちょっ、なにこれ…っ、なにこれぇぇええええええ!!!!!


「ザキヤマ?ほーん…知らんわ」


んだとゴラァァァァ今吉テメッ表出ろやゴルァァァァァァ!!!!!


「あの…わたしチョコ買ってきていいですか?」
「ん?ええよ?買ってきぃや。」
「………」
「………」
「………」
「…買わへんの?」
「あなたがいると買いにくいです」
「そーかそーかそりゃスマンかったのお!!!ほなワシは帰るわ!バイビー!!」
「………」


つーかあの人いくらテスト期間だからってなんでこんなとこいんのバカじゃねーの?勉強しろよ。


「っふー…」
「あ、やっぱそれ買うんやーん」
「!?!?」
「あんなこと言うてホンマは花宮に…」
「山崎くんは!!!これが好きなんです!!!!!」


そうだ!!!よく見えねーけど俺はあのチョコが大好きだ!!!邪魔すんじゃねーよ妖怪!!!!


「ザキヤマ?ほーん…知らんわ」


んだとゴラァァァァ今吉テメッ表出ろやゴルァァァァァァ!!!!!


「ありがとうございましたー」
「っふー…」
「買うたか?」
「まだいたんですか!?」
「せや!このあとお茶してかへん?」
「しません」
「えーそんなこと言わんとワシと一緒に…」
「あんたさっきから気色わ…っ!?」
「ウチの奴隷にちょっかい出すのやめてもらえます?」
「あ、花宮」
「………」


はっ花宮ーーーー!!!!ちょ、うそ、花宮ーーーー!!!!!なんで!?なんであいつまでいんの!?お前ら○1○1大好きだな!!!!!


「ちょっ…マフラー引っ張んないで!ってかだーれが奴隷だコノヤローどっちかっつーとお前がわたしの下僕だろしね」
「………」


…あり?花宮が言い返さないぞ…?何も言わずに後ろから引っ張ってたみょうじのマフラー離したぞ?離したっつっても乱暴にしすぎてみょうじ前につんのめったけど。そしてそれを今吉が受け止めたけど。妖怪テメェコノヤロー俺のみょうじに気安く触ってんじゃねーぞオラァ!!!!


「花宮アカンでぇ女子は手で包み込むように扱わな」
「やめてくださいさぶいぼ出ました」
「そらアカンわワシがあっためた」
「やめろ」


なんだあの妖怪ただの変態じゃねーか。変態妖怪サトリじゃねーか。おい花宮早くサトリから俺のみょうじ助けろよ。本当は俺が今すぐサトリぶん殴ってやりてーけど俺今耳が酸っぱくて身動きとれねーんだよ。


「…はーなーみーやー!そんな睨むなやー!」
「…別に睨んでません」
「あ、これからみょうじとお茶すんねんけどー」
「しねーよ」
「花宮も行かへん?」
「行かねーよ」
「よっしゃ行くでー飲むでー!」


サトリは花宮みょうじの「「行かねーっつってんだろ!!!!!」」両意見を丸ごと無視り、二人の肩に手を回し上機嫌で最上階のレストランフロアへと向かっていった。ケルベロスよりも、キングギドラよりも、トッサーランドよりも恐ろしい3つ首の生物が誕生した瞬間だった。




いつから冬設定かって?今でしょ
* * *
2013.02.04