VIPルームで待てとキス
「うお〜〜VIPルームの緊張感!このソファーはよく沈む!」
「ナマエ、庶民感を爆発させないでください」
「いや、アズールこれ、これは人を駄目にする。いかん。俺立つな」
立ち上がると僕の机のそばに膝立ちをする。彼に見られて困る書類は特にない、というよりも彼は書類を見たって意味がわからないから問題がない。彼は目の前を見ているとき頭の中は明後日を考えているような男だ。それに、本当に寮長以外に閲覧権限のないものは彼の居ないときに済ましている。先日の1件以降、共有する時間は雑務時に捻出すれば効率的だと気づいたのだ。
「アズール、机にこういうコレクションちょっと置くの好きなんだね」
「まぁ、気分転換になりますからね」
「あ、飴いる?」
「いえ……いや、食べます。何味ですか?」
「桃味。はいどーぞ」
ピンク色の包装紙を破り、口にほうりこんでナマエの肩を叩く。顔を上げた彼のメガネを外して唇を合わせる。驚いた後に、恥ずかしそうに目を閉じた。一つの飴を分け合うようにちゅるり、くちゅ、と音がなる。
「あ、あずーる、ももあじ」
「あぁほらよだれがこぼれてますよ」
「んー、ちゅ、ぁむ、あぅ」
僕の腕に縋り付く腕をしっかりとつかまえる。ふにゃふにゃになって、唇を離せば腕はそのまま床に座り込む。脇に手を差し入れて椅子の上に引き上げれば僕により掛かった。不満げに唸る声も、胸元を掴む手もケアの成功を示していて満足だ。僕にとっても効果的で、日常的な接触として週に2度はスケジュールに組んでも良いかもしれない。
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