距離感バグ
※夢主がNRC生
今日も今日とて7〜8分の遅刻してにこやかに教室にはいってきた五条に3人はもうとやかく言うこともなくなった。「テンション低いよ〜!」なんて煽りも、五条に慣れ始めた虎杖に軽くあしらわれる始末だ。そんな教え子たちのローテンションも何のその、五条には今日いっそう無表情を決め込む伏黒恵に送らなければならないサプライズがあった。
「はい!じゃあ今日は恵にサプライズ!」
「なんですか急に」
「いつものことじゃない」
「そーそ。それより伏黒にだけのサプライズってなんだろうな!」
五条の一挙一動で顔が死んでいく伏黒はもはや悟りを開いたような顔をしている。「はいっといでー!!」という軽やかな声とともにガラリと引き戸が開く。その瞬間、伏黒は呼吸を忘れ、世界が色づき、音は消えて鮮やかになる。そこには別の学校へと進学していった伏黒と同じように五条が後見人となっており、これまで津美紀と一緒に片時も離れずにいた最早自分の半分と言っていいほどの男が立っていた。見慣れないブレザーとなかの赤いベストがあまり似合わない伏黒の半分が、目があった瞬間花が咲くように笑った。男が一歩踏み出したときはもう立ち上がっていて机の前にあるき出す。数メートルに時間はかからない両端の二人は目を丸くして、発端の五条は意地の悪そうな笑い顔に慈愛をにじませて見ていた。
『メグミ!メグミー!会いたかった!』
『お前、学校は寮だったはずだろ?どうして』
『あそこは捻れた世界、時間も捻れてるしおれの故郷は狭間の街。あんまり時間って概念はないの。学校はハロウィーンが終わったから振替休日!ホリデーに帰ってこれないしオバブロしそうだったから帰ってきた!ただいま!』
「伏黒が英語喋ってる」
「アイツさっきまであそこに座ってた伏黒よね?一瞬ですり替わった説爆誕?」
「いやいや、本物の恵だよ。僕をさしおいていつの間にか二人で英語で喋れるようになってたんだよ!?僕だけ仲間はずれ!」
「伏黒すげー!」
伏黒より小柄な男が心の底から愛おしいという表情を隠しもせずに伏黒の顔中にキスを送る。釘先も虎杖も、もはや海外ドラマを見ている気分でキスに違和感も憶えなかった。どちらかというと「マジでキスするのか英語圏の人間は」という文化の違いに感動すらしていた。
「おーいふたりとも。帰っておいで」
「……あ」
『サトルもただいま!あれ、メグミ顔が赤いよ。体調悪い?』
『恥ずかしがってんの。同級生の前であ〜んな熱いキス顔にかまされてね。それと、恵は同級生二人いるから英語じゃなくて日本語で喋ったげてね』
「……はい、どうかな?」
「バッチリ!」とサムズアップの五条の横にいる二人に流暢な日本語で挨拶をした。
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