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寂しがりに注ぐ愛

※転生パロ。夢主以外記憶有り


 俺の同級生はすごく仲良し。名前は虎杖と伏黒と釘崎。三人が三人ともお互いが大事なんだなぁって伝わってくる。入学したときからそうだった。初対面なはずなのに、初めて会ったわけじゃないみたいに仲良し。五条先生も知り合いですよ、みたいな態度(※伏黒は五条先生が保護者だから基準甘し)。一方、全員とも完全初対面の俺、うららかな春の陽気とは裏腹に一歩出遅れてしまった。皆優しいのだけれど、ふとした瞬間の空気が俺のこと忘れてるんかなぁって感じでちょっとだけ気まずさ有り。

「なぁ、みょうじもステーキがいいよな?」

 四人でこれから五条先生のおごりで親睦会をするからと場所を決めていた。外食は苦手だから、その輪から一歩後ろで通行人を眺めていた。ぼーっと「まぁ、うどんがあればいいかなぁ」なんて考えていると急に腕をひかれる。

「な?」
「うん?うん」

 適当な返事をした俺に虎杖はそうだよな!と笑って、釘崎は考えて返事しろ!と怒る。「どっちも気分じゃないからどうでもいい」なんて場違いなことも言えなくて苦笑いをした。そしてみんながいない方向へ視線をそらした。

「もしかしてどっちも嫌?」

 心がきしむ音がする。虎杖の瞳がまっすぐ俺を射抜いている。上手く誤魔化せたはずだったのに。虎杖の眼差しは間違いなく俺の心を見ていた。

「何食べたいの?みょうじ」
「え?いや、俺、みんなの食いたいもんで、いいよ」
「嘘。本当は違うもんがいいんだろ?俺しか気づいてないから教えて」

 内緒話をするような小さな声だった。確かに虎杖の奥にいる五条先生たちは肉か寿司かの言い合いとどんな店がいいかとか、伏黒が拗ねてるとか、そんな話をしている。五条先生はわからないけれど、伏黒と釘崎は気づいてない。あれ?虎杖ってこんな、こんな顔するっけ?腕を掴んでいたはずの手が、いつの間にか俺の手まで降りている。虎杖の指先が手のひらを撫でる。

「う、えと、俺」
「うん、何?」
「今、は、うどんとか、そばとか、食べたい」
「オッケ。みょうじの食いたいもんあるとこに行こ」

 絡みそうで絡まなかった指をギュッと握ってから虎杖は五条先生たちに混ざりに行った。ステーキから一転、りっぱ寿司に行きたいと元気に提案する。回らない寿司希望の釘崎からは大きく批判があったけれど、五条先生が「イイね!」と了承したので決定した。虎杖が俺の方を振り返り手を降って俺を呼ぶ。

「先生ー!俺みょうじと二人でタクシー乗る!」
「お?そう?なら野薔薇と恵は僕とねー。このりっぱ寿司だから」
「おう!」

 先にタクシーに乗り込む三人を虎杖と見送る。車が動いた瞬間、また、俺の指に虎杖の指が絡んだ。どきりと大きく心臓が脈打つ。虎杖の太い親指の腹で俺の親指の背をすりすりと撫でた。虎杖の短い爪が羽みたいにくすぐった後、皮の厚い腹のほうで俺の指の長さや太さ、血管の凹凸に加えて肌の乾燥具合さえも確かめるように触る。

「い、いたど、り」
「ん?あれ、みょうじ汗が......。体調悪い?」
「いや、その、えと、手」
「あー、ごめんごめん。先に聞けばよかったな。手、つなご」

周りには沢山人がいて、決して静かではない環境のはずなのに虎杖の声がやけに耳に残る。背中にゾクゾクと悪寒ににた何かがはしり、つないだ手のひらがどんどん湿っていく。目には羞恥心がこぼしたがる涙が溜まっていた。熱い頬を隠すためにうつむいて、掴まれた手をほどこうと開いた。

「ごめん、汗かいてるからはなしてっ」
「やだよ。俺つないでたいもん」
「そ、そんな」

俺が手を降ったところで虎杖の指は解けない。可愛いから、と目を細めるその顔に汗をかく。虎杖、なんで俺にそんな顔するの。俺、知ってるぞ。お前みたいなやつは俺みたいなクラスの隅でソシャゲ周回してるオタクには自分から話しかけになんてこないだろ。

「お、タクシー来た!行こうぜ」

離される気配のない指は、りっぱ寿司につくまで絡んだままだった。何だったらりっぱ寿司についても。テーブルの下で何度か手を繋がれた。冷え知らずの手の感触が染み込んでいくことだけを憶えていた。

小話1
 分厚いレンズのはまった、太い黒縁メガネがのった顔は俺の好みとはかけ離れている。もっといえば、あいつは女の人ですらない。それでも、こいつがいいと思ってしまったのは、”今まで”見たことがないやつだったからだろうと言われてしまえば否定できなかった。初めてできた伏黒と釘崎(何度か順平ともなったことがある)以外の同級生は細くて、薄くて、性格も俺とは縁のなさそうな静かな奴。

「こう言ったらあれだけど、怯えてる猫が懐いたら可愛いだろうし甘やかしてあげたいし、守ってあげたいじゃん」
「あんた繰り返すうちにちょっと歪んだわね」
「いや、釘崎、懐いてない動物がなつくと可愛いし甘やかしたいし守ってやりたいぞ」
「うるせ〜、一人動物園野郎が」
「なんだよ、腹減ってんのか?」

 スマホのカメラロールは頼んで一緒に撮った自撮り。写真なれしてない顔はいつ見ても緊張が伝わってくる。その次はこの間の親睦会で一人うどんを満喫している写真。曇った眼鏡が頭に乗っていて、地味な顔が赤らんでいる。

「あー、可愛いよなぁ。ほんと」

 ガラガラと引き戸が音を立てる。みょうじがトイレから戻ってきた。その後ろから遅れて登場する五条先生。俺と一番に目があって、笑いかける。気まずそうにそらされた視線の先は俺達とは一席向こうの机。駄目だよ、みょうじの隣には俺が座るんだから。

「俺、みょうじの隣がいい!いいだろ?良いよな!」
「え!?あ、わかった、わかったから!」
「こらこら悠仁。なまえに鬼気迫る感じで追い込まないの」



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