1.焦がれる ソニック
胸の奥がぐっとして、息が詰まるみたいだ。頬を撫でる風が彼を連想させる。無意識に溢れた名前は誰に受け取られることもなく、ぼたりと地面へ落ちていく。その様は、ベッドの中でうずくまる自分のようだと思った。
「hey,he-y,邪魔するぜ」
寝室の扉を開ければ子どもみたいに丸くなって眠っていた。顔も赤く息も荒い。見て分かる通り風邪を引いていた。そっとソニックは頭を撫でると乾いてかぴかぴになった冷えピタを張り替えた。冷たい感覚にふるりと震えたが、眼を開けることはなかった。
買い物袋を持って、冷蔵庫に買った物をしまっていく。自分はお気に入りの炭酸ジュースがあれば風邪だろうが何だろうがどうとなるが、相手が変われば事情も変わる。彼はどちらかといえば繊細なほうだ。そして何より胃腸が弱い。風邪でグロッキーなときに炭酸なんて飲ませたら、彼はトイレと結婚するだろう。
一通り終えるとまた部屋に戻る。お粥なんてものは作れないので後でエミーに来てもらおう。頭のはしでそんなことを考えながらベッドに座り込む。
「ソニック・・・」
小さく聞こえた声に振り返れば、虚ろな眼と視線がかちあう。顔を近づけて応えれば、弱々しい力で引きづり込まれた。
「ソニック、ソニック」
「落ち着けって。今日はどこにも行かないさ」
おぼろげな意識の中で聞いた声に、また心が焦がれた。
2024.02.11 変換無しに修正
2015.02.24
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