藤丸立香(fgo)
かきかけ
穏やかな声で名前を呼ぶ人類最後のマスターはお盆を持ちお茶を乗せ俺の背後ににこやかに佇んでいた。こんにちはと挨拶をすればもうこんばんはが近い時間ですよ、と告げられて今日もまともな食事をしていないことがバレてしまった。
ここ、カルデアのマスター藤丸立香くんは、こうしてカルデア職員の不摂生を咎めにやってくる。それは少ない他の職員も例外ではなく、レイシフトしていなければ食事を運んでくるのが常だ。とりわけ俺とドクターにはしつこく眠れだ、飯を食えだ、たまには遊べだと隙を見てはやってくる。わかってはいるのだけど、俺たちはなかば趣味と同じくらい楽しんで仕事をしているものだからプライベートとの境目が曖昧になってしまうことを立香くんはお見通しで寝なければ俺も寝ない、なんて我儘を持ってして俺の睡眠時間を確保する。今日もそのパターンのようで立香くんの監視のもとで食事を摂り俺の自室へ。サーヴァント達に微笑まれながら歩く廊下はとてもじゃないが心地よくは歩けなかった。
2
立香くんの青い瞳に捉えられると動けなくなってしまう、そう相談を持ちかけられたロマニは細めた眼を楽しそうに緩めておめでとうと声をかけた。それが恋であろうと崇拝であろうと友情であろうと憎しみであろうとこの際あまり関係はなく、他人に興味をもつことのない彼が初めて他人の瞳を捉え、色を認識し、さらには個人を識別したのだ。これを喜ばずしてなんになるのだろう。あぁ、こんな状況でさえなければめいっぱい祝福を彼に送れただろうに。初めての感覚に戸惑い猫背でうつむく顔に手を添える。
「興味をもつことはとても良いことだよ。ところで、君は立香くんの瞳を見たときどんなことを感じるんだい?」
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