終わりそして始まり




先ずは蜜柑達の縄を解くことにした。
しかし、思ったよりも縄はきつく結ばれているらしく、なかなか解くことが出来なかった。

どれだけ固く縛ったのよ!!


アリスを使うことも出来るが、私の力じゃ此処に張ってある結界を揺らしてしまうかもしれない…
それにアリスの力が大き過ぎるから…


というのは建前で面倒だったりするんです☆



「どうしようかしら。切れなかったら何も出来ないし…」


「んー。噛み切ってみるわ。パーマ後ろ向いて」




そういうと、ガジガジとスミレちゃんの縄を食いちぎり始めた。
…最早人間の成せる技じゃないわ…



レオちゃん達はあっちで話をしている
蜜柑達の向こう、棗の姿を目で追うと、いつの間にやら目を覚ましたらしく、蜜柑の奇怪な行動を目を丸くして見ていた。
まぁ、そりゃそうよね…



「2人とも棗が起きたわよ?」



古宵がそう言えば、蜜柑は身体を起こし、スミレちゃんは小声で叫んだ。



「あ、ホンマや!」


「キャ―っ棗君、良かった――!!」


その様子見て棗はまた言葉をなくしたが、そんなことは無視し古宵は今の状況を棗に説明した。



「ごめんなさい。なんか付いて来ちゃったのよ」



私が苦笑いすると棗の眉間にまたシワが増えた。
それに先ほど癒しのアリスを使ったが、此処に張られた結界のせいか苦しそうだ。



「……どうにかして学園側と通信が取れなければいけないわね…例え此処から出れたとしても途中で捕まるわ」



一刻も早くこの場を去らなければ私たちの身が危険だ
私一人だったら何とかなったんだけど…
まぁ一人じゃなくても何とかなるけどこのこ達が力に耐えられるかどうか…



「お前、瞬間移動のアリス使えねぇののかよ…」

「(使えるけど…)…ごめん」


別に瞬間移動なんて赤子を捻り潰すくらいに簡単だ、だが


「使えたとしても、この結界のアリス、中々強くてね。…何処に飛ばされるか」



確かに出来ないこともないし、別に私から見たらこのアリスは強くもなんともない
しかし、私は用事があって此処に来たのだ
この期を逃す訳にはいかない




「結界が張ってあるみたいでアリスが上手く使えなくて…。燈月さんの言うとおり学園側と連絡が取れなかったら、私たちで此処を脱出するしか…」


「……おいバカ」


「バカゆうなっ」



「…お前、その耳につけてるパンダ何だよ」








一斉に其のパンダに6つの目が向けられる。



「はぁ?これは蛍にもらった通信用イヤーマフラー…」



…その場が一気に冷めた雰囲気になったのは言うまでもない。





ーーーーーーー


「…レオが『反逆者』だったとは」


緊迫した職員部屋の中、神野の声が凛として聞こえる。



「これは打って変わって由々しき事態ですよ」


「…ということはこの事件、裏であの組織が糸を引いてるってことに」


「一刻の猶予もありませんな」




玲生が反体制組織、Zの一員―――…



宵先輩はこのことを知っていたのか?


鳴海が頭を悩ませていると、突如愉快な音楽が耳をつく。




〈〈パーンダ・パンダ・パンダのダンス――…〉〉





「はい、こちら蛍です。ああ蜜柑?あんたやっとスイッチ入れたわね」


「今井さんっ!?」




いきなり通信を開始した蛍に鳴海は驚きの声を上げる。
それはそうだろう。
相手は今現在、誘拐されている人物なのだから。



「何か外野がうるさいから代わるわね」


〈〈―もしもし蜜柑ちゃん?僕だけど聞こえる?〉〉


「鳴海先生!!」


イヤーマフラーを少しずらし、4人全員に聞こえるようにする。
するとその隙間から聞こえたのはナルちゃんの声だった。



〈〈今井さんから大方のことは聞いたよ。大変だったね、4人とも無事?〉〉


「えぇ、みんな怪我はしてないわ。それでここは何処かの港よ。うーん、そうね多分●●港だと思うわよ?あとは、結界張ってあってアリスはむやみに使えなくて困ってた所」



鳴海の問いに蜜柑の頭の後ろまで来て小声で古宵は答えた。
因みに古宵は此処が何処の港かは最初から分かっていた
そんなのアリスに掛かればチョチョイのチョイだ



〈〈分かった。直ぐに助けに行くから。じゃあ、声出すのは危険だから此処からはみんな黙って聞いて…〉〉



その後、言われたのはそのまま気を失ったフリを続けることと、マイクをONにしたままでいること。最後に手足を拘束している縄をどうにかして解くことだった



〈〈でも縄はなるべく宵ちゃんじゃなくて棗君が切って〉〉


宵ちゃんのアリスは大き過ぎるから



そう言われて棗は出来るだけアリスを抑えて自分の縄を切り、私と協力して蜜柑達の縄を解いた



〈〈縄を外した後、確実に逃げるチャンスが出来るまで縛られたフリを続けるんだ〉〉


棗の顔色は悪くなり、息も荒く上がっている。
そんな棗を見て、結界を揺らそうとも面倒だったからと言わず私が縄を切ってやるべきだったか、と後悔した。



〈〈それと2つ重要なことがある。一つは出来る限り自分のアリスを明かしちゃダメだ〉〉


〈〈それともう1つ。一番重要なこと〉〉



ナルちゃんの声が今までになく張りつめたものとなる。
蜜柑はスミレちゃんの縄を外しに掛かった。



〈〈何があってもレオの“声”を聞いちゃいけない。もし聞いたら……〉〉



フッとナルちゃんの声が聞こえなくなる。
そこに振ってきたのは今日一日、一番聞いたであろう声だった。



「…成程。通信機だったんだ、コレ」



見上げた先に立っていたのは―――



レオちゃんだ。


目の前にイヤーマフラーを手にしたレオちゃんの姿。
私たちの唯一の連絡手段を奪われたということは、命綱を断たれたことを意味していた。
そんな私たちの心情を知らないであろうレオちゃんは楽しげに笑みを浮かべる。



「ヘロヘロの体で、紫堂の結界揺らすなんて…やっぱタダ者じゃないね、お前」


私は盛大に舌打ちをした
やはり、私がやったほうがよかった…


そしてレオちゃんは、通信機を口元に寄せ学園にいるナルちゃんに話しかける。



「…お久しぶりです。ナル先輩」

「玲生…」


レオちゃんとナルちゃんが親しげたったからか、はたまた通信に出たのがレオちゃんで驚いたからか。
職員部屋はザワつきはじめる。



「先輩の可愛い生徒と俺の愛しい愛しい飼い主、勝手にお預かりしちゃってスミマセン」


大してすまなそうではなさそうにレオちゃんは軽く謝る。
いやいや、愛しい愛しい飼い主って…
ちょっと引くじゃないかい、レオちゃんよ…


「ま、預かったっていってもお返しする日なんて来ませんけどね…永遠に」


んべっ、と舌を出し子供のような態度で応じるレオちゃん。
そんなレオちゃんをみて古宵はポーカーフェースの下で悶えていた←

ヤバいヤバいヤバいヤバい!!
レオちゃん可愛いよ!!
もうお姉さんが可愛がっちゃう、流石はアリスの可愛い可愛い飼い猫ちゃん♪

すでに壊れていた(笑)
だが、鳴海はそんなことを笑ったり、昔を懐かしんだり出来るような場合ではなかった。



〈〈玲生…お前。何でZに……〉〉


「驚きました?でも僕の方こそ驚きですよ。古宵はまぁ分かりますけど、貴方ほどの人が学園の犬なんかに収まってんですかー?」

蜜柑たちは知り合いらしい雰囲気を醸す2人に口を開いたままで、レオは表情を笑みから不満へと曇らせていく。



「玲…」



自分の言いたいことだけ話し尽くすとレオは一方的に話を終わらせ、通信機を放り投げた。



「さ・て・と」

「縛り直しますか?」


男がレオに問う。



「いい。…紫堂、ここだけ結界ゆるめろ」


「レオさんそれは…」


「いいから。縄で縛られてなくても、抵抗できないってコト教えてあげなきゃね」


仕事用の顔を持ち出し、耳元の制御ピアスを緩め始めるレオちゃん。


アリスを――使う気だ。


「ちょうど2人のアリスも訊き出さなきゃだし。」


コツコツと此方に歩み寄り、スミレちゃんの前に立つ。


「……お前のアリスは?」


「わた…あ……体質…」


「言っちゃ駄目よ!耳塞いでなさいっ」


古宵がスミレに向かって叫ぶ。それと同時…否、少し遅れてから棗が何か工具を地面に投げる。



その場にカンッという音が鳴り響いた。







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