手紙





蜜柑がアリス学園に入学して一週間ぐらい




なぜか蜜柑が教室で奇怪なダンスを踊っていた



「恥ずかしくないのかしら?と言うより何やってるのよ」



と聞くと裕くんが答えてくれた




「蜜柑ちゃんが、入学してからずっとお家にお手紙書いているのに、返事が来ないから心配になって…」


「ダンシング占いでじーちゃんの様子を見てもらっとったんや!」




ダンス終了直後の蜜柑の息は荒い


私絶対やりたくないわ
例え身内の安否がしりたくてもね



蜜柑は音無さんに向かって叫んだ







「せ…先生っ!何か分かりましたでしょうかっ」


「みえる…みえるわ……佐倉さん…貴女のおじいさんは…」





「「今この学園に来てるみたいよ」」



音無さんと私の声が重なった



みんなが驚きの声を上げ、何故古宵も分かったのかと視線で訴えてきた



「私だからよ、」

流石は女帝、一言で終わらせた





「…門前で『孫に会わせろ』としつこくくいさがっては追い返されるエンドレスバトルが見える…」




それを聞いた途端に蜜柑は声を荒げ、お祖父さんに会いに行こうとする



「だ…だめだよ蜜柑ちゃん。生徒は特別許可されない限り外門付近に近づく事は禁じられてるんだ。破ると罰則が…」




それを裕くんが止める




「うわーんっ!通して、通して通してーっっ!!!!」







パニック状態に陥っている蜜柑を周りは冷めた目で見る




「じーちゃんがせっかく会いに来てくれたのに追い返すなんて……怒られたってウチ行くもんっ!」



駄々を捏ねる蜜柑を心が優しい裕くんは止められず、蜜柑は「じーちゃん!」と教室を飛び出そうとした




仕方がない子ね、



「影あやつり」




ガポン……





蛍のザルを蜜柑の上に落とすのと古宵のアリスが発動したのはほぼ一緒だった



そして蜜柑が逃げないようにザルの上に委員長が乗る



「模範優等生の委員長でさえ家族との面会は年一回がいいところなのに、今行ったとこであんたが会わせてもらえるわけじゃないでしょ」



「蛍…っ」





目に涙をためて蜜柑はそんなっ、と顔を歪ませた





「はぁ、蜜柑。」



とよしよしと私は蜜柑の頭を撫でる



「ここで騒いでこれ以上、自分の立場悪くするつもり?」

と言う蛍


まぁごもっともね



「いい?寂しいのは貴女だけじゃないわ。貴女より小さい子も我慢しているのよ」



蜜柑をあやすように優しく話しかける
蜜柑は悲しげにザルの中にまた入っていった



「「「………」」」





「――オイ、何アレ?」





そうぼやいた男子の向く先には、蛍に抱きつく蜜柑の姿があった





「蛍ちゃんが負けたんだって」

「は?」



まぁ分かるわ。
泣かれたらきっと私も折れてたもの
でも、厄介ね〜
この後確かあれよね



蜜柑はとりあえず門前のおじいちゃんの様子を見ようとしている





私は蛍の背後から画面を覗いた



そこには門前で喋っているお祖父さんと警備員の2人の姿が見えた




蜜柑はじーちゃんやっっ!!と大喜びしていたが、やはり容態は思わしくないようだった




「蜜柑、喜ぶのはまだ早いわ」




「え…」




画面を再度見る蜜柑




『孫に…孫に一目合わせてくださいっ……ゴホ、ゴホッ』




目に映るのは咳をし、必死に警備員にすがりつくお祖父さんの姿



「……じーちゃん………病気!?」





蜜柑は目を凝らして画面を見つめるがその事実は変わらない




『電報でいきなり、孫がアリス学園に入ったと知らされて……それ以来何の音沙汰もなく………プツッ』




衛星の妨害電波によりいきなり映像が途切れた




蜜柑はショックで固まる




毎回手紙は書いてとったし、じーちゃんもそれに目を通しているものと思っとったのに何でなん?





「どういうこと――――っっ!?」



「知らないわよ」




バッサリと蜜柑を切り捨てる蛍

めげずに蜜柑は続けた







「なんで!?音沙汰なしって…ウチいっつもじーちゃんに手紙だして…「届いてるわけねーだろ」」




蜜柑の言葉を遮ったのは棗だった



「教師がバカ正直に外との接触を許すかよ。特にお前みてーな悪目立ちのバカ。めでてー奴」


そして続ける



「学園にいる大人で信用できる奴がいると思ったら大間違いだ」



それほど大人が嫌いなのね…



「特に俺やお前みたいな目をつけられた奴にとってはな」



棗はあぁお前もか、と目線で訴えてきたが私は知らんぷりをしておいた


あら私は目をつけられてはいるけどそれは初校長よ
あの人うっざいのよね
あんな人に目をつけられても怖くないわ


と思っていたら棗は教室から静かに抜け出していた






「棗君…ドッジボールの日以来、何だか機嫌悪いよね」




何故?棗の任務は全て私が変わっているのに、何があった?
レイが何かをいった?





「蜜柑」




蜜柑を呼ぶ蛍の手には、一枚の封筒があった


それは盗聴器と監視カメラの機能を備えたシールが張ってあるものだ


ずっと思ってたんだけどこれって犯罪よね?


久しぶりにまともな事を思った古宵だった



そして蜜柑はそのシールつきの手紙を鳴海に渡した




はぁ面倒だわ
なんとかしてあげたいけど
蜜柑は「無効化」だから風あたりが強い
そんなのは納得がいかない
泉水ちゃんは学園の為に…
ホントやになるわ




まぁはっきり言うと棗の言うとおり、学園側が蜜柑の手紙を外部に渡すすなんてないのだ

燃やされていることは知っていたけど…
やるせないわ


ホント学園は己の事しか考えてない






〈〈また佐倉さんから手紙のことづけですか?〉〉


副担任の声が響く


〈〈うん。彼女にとって唯一家族との交流手段だからねv〉〉



シールにより音声と映像は蛍のもっている小型の画面に受信される



〈〈でもどんな事情か私には分かりませんけれど、”無効化のアリス“ってだけでこの状況は…〉〉


〈〈…まぁ、過去の事件のせいで“無効化”は学園ではある意味、禁忌となっているからね〉〉


〈〈毎回、この手紙が焼かれるのを見る度、何も知らない彼女が可哀相で…〉〉




ナルちゃんが暖炉の燃え盛る炎の中に手紙を放り込む


手紙が暖炉で燃やされたため、画面には砂あらしが吹き荒れているのは必然的



蜜柑は顔を強張らせて立ち上がった




「…蜜柑?……どこ行く気?」




蜜柑に声をかけた蛍だったが蜜柑には蛍の声など聞こえていなかった



あっという間にバタバタと蜜柑は走っていく

古宵は蜜柑を追いかける



蜜柑はナルちゃんがいる教員部屋へと向かっていた



嘘つき、と言う声と何が割れる音が聞こえてくる



「鳴海先生のこと信じてたのに!ウチのこと騙したん!?」



そんな声が聞こえてきて私は中に入れなかった



ごめんね蜜柑、ナルちゃん
何も出来ない私を責めるのかしら



「うそつき!じーちゃんに会わせて!!…会わせて!」


そう言って蜜柑は泣き崩れた











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