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「…あ、そういえば短刀直入に聞くけど『安積柚香』の行方を知っている?」
唐突すぎるなオイっと誰もが突っ込みたかったが、流石に古宵をキレさせるとここいらが血の海になるため心の中で突っ込みを入れておいた
シン……と辺りは水を打ったかのように静まり返る。
そこにレオちゃんが驚いた様な顔で答えた。
「……先輩…そういえばなんで学園なんかにいるんです?」
「質問を質問で返さないで欲しいんだけど…まぁ私だけ情報を求めるのはフェアじゃないし、教えてあげるわ」
ぅふふとちゃんとテメーらも教えれよというような微笑みを浮かべていた
「『Zの行方』『安積柚香の捜索』のためかしらね。ま、そんな所よ」
まぁまだ他にも理由はあるけど…と思ったがそこまでは言わなかった
「…『Zの行方』………?別に学園行かなくてもいいじゃないですか」
「まぁ、いろいろあるのよ」
「そうですか…」
「ええ♪」
古宵はにっこりと貼り付けたような笑みで振り返ると、急に表情を変えピンと張りつめたような空気を醸し出す。
「じゃあレオちゃんも次は私の質問に答えてもらえる?」
「『安積柚香』の行方…でしたね。はい、知ってますよ」
「………Zに…いるのよね…?」
レオが無言で頷く。
「そう」
「でも、先輩ならそれくらい簡単何じゃないですか?それに俺ビックリしてるんですよ?なんで偲炎の事は聞かないのかな?って」
「あぁ、あの子の事は分かってるわ…」
急に興味が薄れたかのように古宵はレオから離れ、壁に背を預け軽くため息をついた。
これからどうしようかしら…
やっぱりあちらで動くしか…
途端に張りつめた空気も消えうせる
「先輩でもあり、組織の仲間でもあるんです。管轄は違いますけど」
コツコツと靴音が背後に近づいてくる
そして少し離れた所でレオちゃんは止まった
が、レオちゃんは踵を返す。
「おい、ガキ目覚ましたか?」
レオに聞かれて一人の男が蜜柑たちがいる方へ足を向ける。
丁度蜜柑たちが見える所に立っていた古宵は目線で蜜柑たちを見る。
すると、そこでは目を覚ました蜜柑とスミレちゃんが急いで寝たフリをする所だった。
「(今の話、聞かれてないわよね?)」
「……まだです」
知ってか知らずか、その男は少し間をあけた後確認するようにそういった。
私はレオちゃんの脇に腰を下ろしレオちゃんはそれを気にぜず、寧ろ嬉しそうにしながら口を開いた。
「…ボスは何て?」
「連絡時には不在だったので…」
「なーんだ。つまんないの」
遠慮がちに言う男の言葉に、レオちゃんはまるで子供のように返事を返した。
「密輸船は?」
「今夜2時、それまで学園側に見つからないよう此処で待機との命令です」
あー、しまった密輸船のこと忘れてたわ…アハ☆
「『日向棗』は組織送りとして、おまけ2人は売っぱらう前に何のアリス持ってるか確かめる必要が…」
レオと会話していた1人の男の台詞を耳に入れて思わず古宵はその男の胸倉を掴んだ。
「ちょっと、人身売買だなんて!!聞いてないわ!」
まぁ忘れてた私も悪いけど←
ハッと鼻で笑い、男を見下ろす。
男はカタカタと身体を震わせ、恐怖に塗れた瞳がサングラス越しに揺れていた。
「あぁもう!面倒ったらありゃしない!!どうして皆私の手を煩わせるのよっ!!」
手元にあった男を床に落とし、大層な溜息を吐くと古宵は額に手を当てた。
だれも言わないが結局古宵は自分が面倒だからという理由で怒っているだけだったりする
だれも何も言わないのは古宵が恐ろしいから
「もちろん古宵は俺と一緒ね♪」
きっと皆の前だからかレオちゃんが私の名前を呼び捨てでにっこりと笑って嫌味のように言う。
私が何も言わずに視線を逸らすと、満足げな表情を浮かべたレオちゃんが蜜柑たちの方に足を向けた。
「……コイツがあの『黒猫』ねぇ…」
レオが足で棗の顔を転がすと棗が低く呻きを上げる。
その光景を見て古宵は素早くコンテナの上から飛び降り、レオの腕を止める。
「やめなさい!」
怒涛を含んだ声でそう言えば、レオちゃんは顔を足蹴にすることこそ止めたが棗の胸の辺りを尚も足で踏んでいる。
一向にやめようとしないレオちゃんの姿に古宵はイラつき、レオちゃんの耳元に唇をよせ何かを言った
「やめろといったはずよ?レオ」
耳元で囁かれ、そしてレオと呼び捨てで呼んでもらった為直ぐに棗から足を退けた
「はぁい。…ねぇ知ってます?棗の裏社会での通称」
「…ええ。私の情報収集能力を甘くみないで頂ける?」
「いいえ?………でもどこで?」
「『ハッキング』ってご存知かしら?私、破壊すること以上に追うことも得意なのよ?」
古宵の言葉にレオは微かに驚きを見せた後、まぁ古宵だし仕方ないか、と納得したように頷いて見せた。
成程、じゃあ色々筒抜けなのか…
レオは頭の中で思考を働かせる中、別のことを思いつき笑みを浮かべた。
「じゃあ、なんでこの『黒猫』が組織のブラックリストに載ってるのか知ってます?」
まぁ、知ってるっちゃ知ってるけど…
「確か…2年前、わずか8歳の時こいつは自分の住んでた街全域を一夜にして火の海にしたんですよ」
「…」
「ただ、国に揉み消されて、世間的にはただの放火として事件は迷宮入りで片付けられたけど…」
チラリ、とレオちゃんが私を見たのが感じ取れた。
「まぁ、知ってたわ。でもその情報1つ間違ってる」
「間違ってる?まぁ、そこで国が鑑別所がわりにこいつを放り込んだのがアリス学園…」
レオちゃんの声が響く。
「まだ教えてあげない」
ぅふふ、と微笑むとレオちゃんは背中をゾクリと震わせた。
「何で、ですか?」
古宵はそっとレオの背中を押し、蜜柑たちから離れるよう促した
「秘密〜♪」
レオちゃんは渋々そうですか、というと古宵に従って元の位置へと戻っていった。
それを確認し、古宵は蜜柑たちに話し掛ける
「今の話、忘れなさい」
「「!?」」
蜜柑たちは肩を揺らして古宵の言葉に反応する。
「いい?」
レオちゃんから見えない位置に座り真剣に蜜柑たちにいう。古宵が余りにも真剣だったため、蜜柑たちはただただ頷くしかなかった
「……でよう」
しばらくして、蜜柑は神妙な面持ちでそう提案する。
「…えぇ。まずはここから出ることを考えなきゃ」
「え」
「さっさとしないと密輸船来るゆうてたし…そしたらウチらももっとヤバいことになるよ」
そう、蜜柑の言う通りだ
「死ぬ気で考えんねん。此処からの脱出方法――」
(先輩、俺に着いて来てください)
(えー、嫌よ?)
冗談じゃないわよ!
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