誘拐事件!!?
何故か目をつむっていたら寝てしまってしたため目が覚めると太陽の光が瞼に降りかかってきて、反射的にまた目を瞑る。
起き上がろうとしたとき、手はロープで縛られ隣に誰かが寝転がっていることに気がついた。目が慣れてくると、隣にいる人物の輪郭が微かに浮かび上がってきた。
「…棗?」
とりあえずアリスを使って縄を切り落とし、何故自分が棗の隣でねているのか考えた。
もっとVipとして扱ってくれなきゃーレオちゃん嫌いになっちゃうぞ☆
外では人々の声が溢れ、私たちの体はガタガタと部屋と一緒に揺れたまに止まったり、急に動いたりする。
私は理解した
あぁ此処は車の中か、と―――……
私と棗は多分、『誘拐』されたのだろう。
あ、私は別に『誘拐』とは言わないか…
そんなことを考えている時、不意に声が掛かる。
「あ、おはようございます♪古宵先輩」
「あー、おはよう」
私達が乗っている車のトランクには格子が付いている。
だからその格子の向こう、背もたれから顔を出して嬉しそうに笑っているのはレオちゃんだ。
「古宵先輩ったらなんか寝ちゃうんですもん、だから…」
「…レオちゃん、私達を学園に戻しなさい」
因みに今息が掛かるか、と言うほど近くにレオちゃんの顔があったりする。
「えー、いくら古宵先輩の頼みとはいえ其れは出来ないんですよー」
はぁ、とため息をつき瞬間移動で外に出ようかと思ったが、それは面倒なので止めた
「先輩〜、こっち来ません?」
「いや、こっちってどっちよ?」
ごもっともですね古宵さん
「あぁ、後部座席に来てください♪ってことです。先輩とは喋りたいことが山程あるんですからっ!!」
にっこりと笑ったまま笑顔を絶やさないレオちゃんに古宵は面倒といいながら座席を移動した。
因みに一度車から降りて、と言うのはちょっと不自然だったためアリスで後部座席―つまりはレオちゃんの隣の席へと移る。
「…古宵先輩」
「なぁに?あ、そういえばその呼び方は皆の前では止めて頂戴ね?」
ビシッと古宵がレオちゃんに一喝する。
「えー、なんでですか?」
「だって棗達には未だバレたくないじゃない。そんなこと言うなら捨てちゃおっかn「嘘です!!捨てないで下さい!!」分かったならいいわよ?」
まだ知るには早過ぎるわ…
「というより、なんで先輩黒猫のことは棗って呼び捨てなんですか?不公平です!!俺だってちゃん付けですよっ!!」
「あー、言われてみれば…でも偲炎も呼び捨てよ?」
「偲炎は仕方ないですよー」
ぶーぶー言うレオちゃん
そんなに呼び捨てがいいのか?
別に呼び方なんてなんでもいいと思うのに…
「仕方ないわね〜、条件付きなら呼び捨てにしてあげるわ」
そういうと、レオちゃんは嬉しそうににっこりと笑ってみせた。
「条件ってなんですか?」
「ぅふふ、また後で教えてあげるから♪」
「ちぇー、分かりました」
レオちゃんは明らかにふて腐れた顔で古宵を見る
そんなとき、
「玲生さん」
話を途切らして入ってきたのは運転を任されている紫堂だった。
よくこの人私達の関係に疑問ももたず運転してたな…
「アリス学園関係者らしき人物2名がずっとこの車を追ってるんですが」
「ん――…」
「この発信マークは…多分生徒です」
紫堂の言葉を受けて、古宵は絶句する。
対してレオは何か考えこんでいるようだ。
しまった、忘れてたわ…←
レオが棗の病室に入り込んできてしばらくのことを思い出す。
学園関係者らしき人物2名、それも生徒だなんてあの2人しかいないじゃないか
もー、私の苦労が増えちゃうじゃないのよぅ…
本当は助けてあげたいんだけどどうせこいつ等に蜜柑たちを捕まえるのを止めろと言ったってそんな言葉、通用しないのは十二分に承知の上。
まぁレオちゃんにいったら考えてくれるかもだけど…
はぁ、仕方がないわね…
其の時、キキキ…ッと大きなブレーキ音を立てて車は停止した。
と思ったら、すぐさま紫堂たちが外に出て行き、蜜柑たちを捉える。
私はただただ呆然とその姿を見てた。自体はどんどんややこしい方向へと進んでいく。
何も出来ない何もしない自分が悔しかった。
いま私に出来ることはアリスで棗を癒すことだけだった。
アリスの使いすぎで私はまた眠りについた
そして、どれくらい経ったのか分からないが車はゆっくりと動くのをやめた。
「こいつ等、どうしますかレオさん」
「倉庫の奥にでも放り込んどけ。でも古宵先輩に手荒な真似はするなよ」
外では多数の男の声がする。
さっきより人数は増えているのだと思う。
そして流石レオちゃん、私の扱い方を心得ているわ
そしてパチッと目を開けて最初に思ったのは此処は何処ということだった。
すると突然、ドアが開き私は地面へと落ちかける。
チッ、こいつと思っていたら間一髪のところで紫堂が私を抱きとめ、何故かお姫様抱っこをされた。
私をお姫様抱っこしていいのはにぃにだけよ!!(ぇ
「ちょっと…歩けるから!離して」
「古宵先輩。寝たままでも良かったんですよ?」
何人かの部下を脇に従えて、レオちゃんが話しに入ってくる。
「…だってお姫様抱っこは、ねぇ?」
すでに論点がズレている古宵
「おい、降ろしとけ」
「でもレオさん…」
「心配しなくてもこの女は脱走なんかしない。仲間を置いて逃げるような人じゃないからな、というよりなんでお前がお姫様抱っこしてんだよ」
渋々、というように紫堂は私の身体を地面に近付けた。
ずっと寝ていたせいか、足元が覚束ない。
そんなとき、辺りが潮の香りでいっぱいだということに気が付く。
「そういえば海だったよな〜」
ぐるりと一面を見渡せば一方には海、もう一方には倉庫が列をなしている。
「ついて来て」
レオちゃんたちはさっさとある一つの倉庫に入っていく。
その中は、鉄の匂いが充満していてとてもいい所とは思えなかった。
そしてレオは近くの積んである荷物の上にドラム缶を伝って登ると、私にも登って下さい、と合図を送ってきた。
「まさか、私がこんなことになるなんてね…」
「そうですねー、でも古宵先輩本気出してないですよね?」
まぁ日向棗を捉えられたのもラッキーだけど古宵先輩を捕まえられるなんてもっとラッキーですよ、とレオちゃんは微笑んだ。
それを見て――というか今までの経緯を見て不思議に思った男の一人が恐る恐る、レオちゃんに問う。
「玲生さん、その女知り合いなんですか?」
「あぁ、俺の学生時代の先輩さ。お前らも名前くらい知ってんじゃないのか?『燈月古宵』つったら組織でも結構名を馳せてるしな」
「『燈月』……?」
男はそこまで考えてようやく首を大きく上げて答えた。
「『燈月』って…あの……?!」
男達はお互いの顔を見合わせて騒然としている。
そこに古宵が口を挟んだ。
「さっきから、女、女って…」
「…、先輩キレないで下さい」
古宵は男女差別が嫌いなため、イライラしていた
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