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その後古宵もシャワーを浴び、現在、鳴海の部屋に居座っていた
いや居座るという表現のは間違っているかもしれない、君臨しているのだ
女王のように


「ほんと嫌ね…、見てるこっちがつらかったわ…」


お祖父さんを思う蜜柑のことを、理由も述べずに払いのけるのは余りにも酷だ


「それも学園の勝手な偏見のせいで…『無効化のアリス』だからって蜜柑をあそこまで追い詰めるのは…私に喧嘩を売っているとしか思わないわ、あの野郎…」


ベッドに入り、鳴海は古宵を見つめた
相変わらず初校長が嫌いなようで暴言を吐いている宵先輩
体にあった傷は今はすべて治っており最初から怪我などしていなかったようにも見える
流石は先輩だ、学生時代アリス学園の女帝『Empress of Empress(女帝の中の女帝)』と呼ばれていただけはある
あれだけの大怪我をたった数時間で治してしまうなんて、それほど先輩の能力が強いということか


「…あら、考え事かしら?」

ズイッと寄ってきた少し拗ねたような先輩の顔が僕の目の前に広がった


「え…あ、すいません…」


一応謝っておいた
そして先輩をもう一度見たとき思わず、魅入ってしまった
そして再度先輩は美しい人であると認識させられた


「…そういえば書類、勝手に見せてもらったけど蜜柑は柚香の娘である確率が高いってことよね?」


というより、蜜柑は柚香の子供だけどね…
やっぱりナルちゃんにはまだ知らせないほうがいいかもしれない…
急いで何かあったとき困るしね…
ナルちゃんには言わないとして一己ちゃんには…、やっぱりそれもだめかも…
こんなときにあの子がいてくれたら助かったのだけれど…、今何処にいるのかしら…




古宵がそんなことを考えている頃鳴海は今さっき古宵が言った書類について考えていた


「僕、先輩にアレ見せましたっけ?」


「見せてもらってないわよ?だからさっき言ったじゃない、勝手にって」


「そういえばそう言ってましたね…」


その時突如部屋に枕を手にした蜜柑が入ってきた
もしかして今の話を聞かれたか、と身構えるが全く耳に入っていなかったらしい
古宵が鳴海部屋にいたことに少し吃驚したようだが、今にも瞑りそうな瞼を持ち上げて鳴海を見た


「……先生。一緒に眠ってもいい…?」


鳴海は目を見開いたが、いつも元気だとはいえども、所詮はまだ子供なのだ、と
にっこり笑ってそれを蜜柑と一緒に寝ることを承諾した




「先生はいびきってかく?」

蜜柑は鳴海のベッドに入り込み、唐突に質問をした
いつの間にか、私も一緒に布団の中に入っていた
何故かしらね…??


川の字のように寝転がっている様は微笑ましいことなのだろうが、この面子だとな…と思った
蜜柑は大歓迎なのだがナルちゃんが夫か…………
うん、それなら一己ちゃんかあの子のほうが嬉しかったりする…


「ん――、かかないv(と思う)」


うちもやねん、蜜柑はそう言って今度は私に聞いた


「宵はいびきかく?」

「かかないわ」

「じーちゃんは凄いねん。バキュームカーみたいな音のいびきかくの」

あはは、としかいえないこの状況…

「……先生」

「はい?」

蜜柑は良く考え込んでから鳴海に向って爆弾発言を落とした


「じーちゃんって、呼んでいい?」


この言葉が出るのは知っていたが、その現場に居合わせると居合わせないとでこうも変わってくるとは思わなかった。
激しくウケルわ…


「…………『じーちゃん』はちょっと…」


その返答に蜜柑は鳴海を冷たい目で見つめる
蜜柑の向こう側では、古宵は笑い死にしそうなほどに爆笑していた

「え――、だって僕まだ20代だよ!?」


花のお兄さん!!と嘆くナルちゃんにまた笑いがこみ上げてくる
ナルちゃんは私を殺したいのかと思いながら寝返りをうった


「じゃ、『お父さん』ってのはどう?」


鳴海の提案に蜜柑は顔を真っ赤に上気させてお父さんを連呼し始めた
私はそんな風景を良かったねナルちゃん、と生暖かい目で見ていた…

……のがいけなっかた
まさか蜜柑がこんなことを言うなんて…


「そんなら宵が『お母さん』やな!!」

一瞬私の思考が止まった

「え?…私、蜜柑と同年代なんだけどな……」



実際はナルちゃんよりも年上だけどね



「だって宵は大人っぽいんやもん、やったら『お母さん』の役回りぴったりやん!」


そんな…、私ってそんなふけて見えるのかしら…


「はぁ…、呼ぶならお姉さまと呼びなさい、それかお母様ってね」


最後のはナルちゃんをからかう為に言ってやった
柚香の娘である蜜柑の『父親』役となれば、柚香と少しでも一緒になれた感が味わえたと思う……けど柚香はまだあげない!!という皮肉をこめて


ナルちゃんはどんな反応をしてるかとそちらを見てみると何故かナルちゃんは顔を真っ赤にして私を見ている
ショックを受けたわけでもないらしいがなんで顔を真っ赤にしているんだキミは…
まぁ、いっかと何処までも鈍感を突っ走っている古宵は布団をかぶり、おやすみと呟いて眠りに入った

寝る際、ナルちゃんが窓から見える綺麗な星空を見て、『明日は快晴だね』と寝る間
際に言ったのが聞こえた気がした



(君は貴女を追い求める)
(私はあの子を探してる)











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