マーメイド・シャーク/前



 暗い部屋に、ナッシュは手を縛られたまま投げ込まれた。
 あの後、王に牙を向いた制裁として、数人に顔や身体を殴られた。しかし、痛みに悲鳴を発することもできずにただ荒い息を吐くことしかできない。
 そのナッシュの様子に、抵抗していると思われたのか、更に殴られた。頬は腫れ、唇の端が切れており、顔や身体の所々内出血をしている。
 ヒュゥ、ヒュゥ、と息を吐きながら暗い部屋に横たわったまま、動けなかった。ベクターに手を出すことさえできなかったのが悔やしく、眼を閉じて唇を噛み締めた。

 ガチャリと、再び扉が開く音が聞こえた。ナッシュは眼だけを動かしてそちらを見る。数人の人間が入って来たのが見えた。
 また殴られるのかとナッシュは身を固くしたが、その予想は外れた。
 彼らはまず、湯でナッシュの身を清めた。鬱血している所を触られると痛んだが、人肌の温度の湯は疲弊したナッシュの身体を癒した。

(どういうつもりだ……?)

 ナッシュは自分を労る手つきにただ困惑した。そしてそのまま、複数人の手がナッシュ身体を這い始めた。
 何かを手に付けているのだろうか。ぬるぬると滑る。

(気持ち悪ぃ……)

 はぁ、はぁと息を吐いて奇妙な感覚をやり過ごそうとする。身体中が撫でられる感覚に混じり、胸からピリッとした感覚を感じ取った。

「っ……?」

 そこを擦られる度にピリッピリッと短い電気が伝い、腰がピクンと跳ねた。
 そしてはまた別の手に股の間にあるモノをぎゅっと掴まれる。

(なんだこれっ……!)

 ぞくぞくと腰を震わせるような感覚。全身から力が抜ける。逃げたいのに、その感覚に支配されて動けない。
 触られる度に、もう一度欲しくなるような……そんな不思議な魔法だった。
 そんな感覚に囚われていると、 また別の手が、ナッシュの身体を開いて行く。
 今度は、脚の間にある小さな穴に、指が侵入してきたのだ。

(あぁっ!?)

 痛くて気持ち悪くて、吐きそうになるのを堪える。指は滑りながらナッシュの中に入っていき、中を色々と擦っていく。

「はあ、はぁっ……は、…はぁ……」

 気持ちいいのか、気持ち悪いのか、わからない。もっと欲しいのか、やめて欲しいのか、わからない。
 奇妙な感覚と快感がない交ぜになって、ナッシュの頭を混乱させていた。
 しばらくして、後ろの穴にピトリと何か硬いものが宛がわれた。冷たさにピクッとナッシュの腰が揺れる。
 ナッシュが心の準備ができないままに、それは彼の尻の中に入ってきた。

(ああああっ!いたっ……痛いっ!)

 めりめりと穴を拡げて、それはナッシュの中へ進む。あまりの激痛に、そこが裂けるようだった。脚が出来るときに感じたものに似ていた。

「ふぅっ……ふーっ…ふーっ……!」

 悲鳴は掠れた息の音にしかならない。ナッシュは手負いの獣のように、唇を噛んで息を荒く吐いた。
 尻中に入った物はナッシュの意思とは関係なく、彼の中の壁を擦るように出し入れを繰り返された。
 痛い、やめてくれ。気持ち悪い……頭の中でそれを繰り返していたが、それが中のある一点を擦った時に彼の脳内は一変した。突然、あの、股間のモノを握り込まれた時と同じ感覚を感じ取ったのである。
 ナッシュの身体が跳ねてこれまでと違った様子を見せた事に何かを悟ったのか、その物体の動きが一度止まった。そして、ナッシュが快感を感じ取った、その一点を重点的に擦り始めた。

「はぁ、はぁ、はぁっ!…は、っ……はぁっ!」

(嫌だ、嫌だ、嫌だっ!おかしくなる……俺、おかしくなっちまう……!)

 あれほど最初に感じた痛みや気持ち悪さはもうなかった。ただ、全身がびりびりして、びくびく跳ねて、頭は嫌だと思う一方でその電気のような刺激を感じることだけ考えていた。
 段々、股の間のモノに、何かが溜まっていくのがわかった。
 出したい……。そう思いながら腰を捩り、彼らの手が自分の気持ちいいと思う所に当たるように動いた。ナッシュのその動きを察し、手の動きが早まった。

(あああっ!っ……出る!何か出るっ……!ああっ!)

 ナッシュの目の前で、何かが弾けた。
 身体がピンと張り詰め、股間のモノからピュッピュッと何かを出す感覚と同時に、ガラガラと何かが崩れ落ちていくようにナッシュの身体から力が抜けていく。
 ナッシュの眼は虚ろに空を映し、少し開いた口からは唾液が零れていた。

 彼らはナッシュの身体からサッと手を引いた。そして、また別の手が彼の頭を掴み、薄く開いた口に何か硬いモノを捩じ込んだ。

「っ……!?」

 ナッシュは驚き、思わず口一杯に入ったそれを舌で舐めた。途端、彼の頭が強引に動かされ、喉の奥までそのモノが押し込まれる。

「っ……!げほっ!」

 余りの苦しさに、咄嗟に歯を立てた。すると、ピシィッと身体に衝撃と痛みが走り、歯を引っ込める。
 ナッシュは目尻に涙を浮かべながら苦しみと屈辱に耐えた。歯を立てれば顔や身体を打たれる。

「ふ……っ……んむ、……」

 口の中で、舌で辿る形から、どうやらそれが、さっき自分が触られておかしくなるくらいに気持ち良かった身体の部分と同じものであるらしいということがわかった。
 となれば、硬いそれを解放してやれば満足するだろう。ナッシュは無心でそれを舐めた。
 しばらく舐めていると、顔を動かされる速度が早まった。苦しみに耐え、モノを舐め続ける。
 そして、ナッシュが何かを出したようにそれも何かの液体を出した。ナッシュは半ば無意識にそれを飲む。苦くて不味かった。

 ナッシュの身体を弄られる行為と、口に何かを入れられ、舐めさせられる行為は繰り返し、彼の気が失われるまで続いた。
 そしてそれは何日も拷問のように続いた。ナッシュの口は食事と水と、誰かの股間のモノを交互に口にするようになっていた。
 何日か後には、ナッシュはもうどこを触っても気持ちのいい電撃を感じることしかできない身体になってしまったのである。

 暗い部屋で一人、床に横たわりながらナッシュは悔しさと虚しさに、涙を溢した。部屋に充満する噎せ返るような臭いに、顔を歪める。こんなことをするために、自分は人間になったのではないのに。

(メラグ……カイト……)

 海にいる最愛の妹と、自分を人間にしてくれた恩人の賢者の名前を心の中で呼ぶ。ただ悔しかった。すまない、と繰り返し呟いた。
 そして、……あの海岸で、自分を助けてくれた命の恩人の騎士の顔が思い浮かんだ。

(ドルベ……)

 最後に見た彼は、自分が連れていかれるのを悲しそうに、顔を歪めて見詰めていた。彼は出会ったときよく笑いかけてくれていたのだが、どうしても彼の笑顔が思い出せなかった。

 ナッシュはそこまで思い返し、糸が切れたように意識を手放した。

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