マーメイド・シャーク/前



 ベクターは気に入った者を城内、または城の近くに囲っていた。
 彼は結婚自体はしていない。しかし所謂妾と呼ばれる存在は数人囲っていた。
 ドルベも、その内の一人だ。

 ドルベはこの王国に来た頃、彼に見初められ、騎士になると共に囲われることとなった。
 しかし、囲われている男はドルベ一人のみ。気紛れに、女を抱き飽きたときにドルベを抱く。ドルベは身体を供する代わりにこの国での地位を、約束されていた。

 今日ベクターに広間で言われた通り、彼の部屋へ訪れた。彼の部屋へ行くときは必ず、何も着けず軽装で出向くことになっている。
 控え目にドアを叩くと、中から入れという返事が返ってきた。静かに部屋の扉を開き、中へ入る。
 ベクターは寝台に腰かけていた。ドルベは入ったところで一礼をすると彼の元へ向かった。
 ベクターは何も言わず、脚を差し出した。ドルベは彼の前にひざまづいてそれを恭しく両手で支え、爪先に口付けた。彼が満足するまで、丁寧に脚を舐めてゆく。

「フン、上々だな。ドルベ、服を脱げ」

 ドルベは命じられるままに、着ていたものを全て脱ぎ捨て、身体を露にした。ここには彼の拒否権は存在しない。

「つい最近、いいものを手に入れた。お前で試してみようと思ってな」

 ニヤリと笑った彼に、少し寒気を覚えた。ベクターから手渡された物体をまじまじと見つめる。いくつもの数珠のような珠が連なった形をしていた。

「後ろを向け」

 寝台に手を付き、ベクターに向けて尻を付き出すような格好になる。ベクターは香油を手に取り、指でドルベの後孔を解した後、物体をその孔に挿入した。

「ぅん……くっ……」

 珠が一つ一つ埋め込まれて行く。腸の奥までそれに犯される奇妙な感覚と羞恥に身体を震わせた。
 全て珠が入ると、ベクターは取っ手を掴んでそれを引き抜いた。

「ああぁっ!?」

 腸に埋め込まれていたそれが一気に抜かれる感覚が、電撃のような快感になってドルベを襲った。堪らず、彼は悲鳴を上げた。
 ベクターは新しい玩具を見つけた子供のように、繰り返し出し入れしてはドルベの反応を楽しんだ。
 繰り返される前立腺への刺激に、ドルベの性器は触っていないにも関わらず頭をもたげていた。

「なんだぁ?気持ちいいのか。触られてもいないのにこっちは臨戦態勢だな」

 そう言って、ドルベの性器を無遠慮に掴み、乱暴に擦り上げた。

「あ、っ!ああ、……陛下、陛下っ……!」

 ドルベは喘ぎ、快感に悶えながら首を振った。
 初めて彼に尻を犯された時はあまりの痛みに快感を得ることなく、ただ悲鳴を上げていた。性器が勃起することもなかったのだ。
 しかし、回数を重ねるうちに、ベクターの乱暴な愛撫にも段々ドルベの身体は快感を感じ取るようになっていた。
 たまにこうやってベクターが道具を使ってドルベをいたぶったりしても、いつしか快感を享受するまでに彼は開発されてしまったのだ。

 ドルベは両方からの刺激に追い詰められ、ベクターの手の中で果てた。

「舐めろ」

 ベクターはそう言ってドルベに、精液が付いた手を差し出した。ドルベは何も言わず、彼の手を清めるように自分の精液を舐めとる。
 そして、もう一度あの道具をドルベの中にすっかり埋め込んでしまい、そのまま性器を舐めるように言い付けた。
 ドルベは寝台に腰かけたままのベクターの股の間に身体を入れ、彼の衣服から性器を取り出して口に含んだ。

「ん、ぅ……ふ、んんっ……」

 頭を前後に動かして口に全体で性器を扱き、喉の奥まで導いて締め付ける。時折、舌を出して裏筋や括れを撫でた。
 上目遣いに彼の様子を窺いながら、ベクターの喜ぶように愛撫を施して行く。

「はぁ、……いいぞ、ドルベ」

 ベクターはドルベの頭を押さえながら、彼が懸命に頭を動かして性器を扱く様を眺めていた。

「そろそろ、お前も欲しくなってきただろう。放せ」

 ベクターの言葉に、無意識にドルベの後孔がヒクリと疼いた。
 性器から口を離すと、先走りと唾液が混ざった液体が糸を引くのが見えた。

「欲しいか」

 ベクターはドルベに聞きながら、言外に命令を下した。欲しければ、浅ましく強請ってみせろと。
 ドルベは寝台に横たわり、いつものように脚を広げた。

「へ……陛下の……ください。……私の、浅ましくひくつくこの淫乱な穴に、ぶち込んでくださいっ……!」

 羞恥で顔を赤く染め、腰を揺らしながら欲するドルベの様に満足したように笑みを浮かべ、ベクターはドルベの中から道具を抜いた。

「あぁっ!」

 そのまま、ベクターはドルベのひくつく孔に猛った性器を埋めて行く。ずるりと奥まで入れて一度中をぐるりと掻き回し、動き始めた。

「あっぁ……はぁ、あんっ……!」

「お前の連れてきた少年……なかなかに、活きのいい奴だったな」

「はぁっ……あう、……その、節はっ……!」

 ベクターに尻を犯されながら、ドルベは礼の言葉を口にする。ベクターが気紛れを起こしたお陰で、ナッシュは助かったのだ。

「可愛がってやるさ。この俺の……性奴隷としてな」

 快感に犯されていたドルベの頭が、一瞬凍りついた。それが顔にも出ていたのだろう。ベクターはドルベの様子を笑いながら舌なめずりをして言った。

「奴は既に他の部屋で処置が始まっているだろうな」

「しっ……しかし、彼はまだっ……」

 ドルベが言葉を発した瞬間、彼の尻がパアンと小気味の良い音を立てた。

「ひあぁっ!」

「この俺に何か、口応えする気か?」

 立て続けに2発、3発ーーベクターはドルベの尻を平手で打った。その度にドルベは悲鳴を発し、ベクターの性器をくわえこんでいる孔がきゅっと締まった。

「お前尻を叩かれて感じてるのか。変態だな……この淫乱め」

 ベクターは笑いながら、彼の尻を打つ。そこは赤くなり、じんじんと熱を持っていた。
 しかし、その痛みさえも快感に書き換えられてしまっていたのだった。

「あぁ、ああっ……!陛下っ!私の、失言っ……お許しを……!あぁあっ!」

「その淫乱な身体に免じて許してやる」

 ベクターはドルベの脚を抱え、激しく腰を動かした。ごりごりと中を擦られ、ドルベは喘ぐ。性器は勢いを取り戻し、先走りを垂らしていた。

「出すぞ、ドルベ……受け止めろ!」

「ひぃっ、あ!陛下っ……あっ、あ、ああっ!」

 程なくして、ドルベは自分の腹の上に射精した。ベクターも数回彼の中を穿った後、そのまま精液を吐き出す。
 二人は射精の余韻に浸りながら、荒く呼吸を繰り返していた。

(ナッシュ……)

 ドルベは頭の隅で、保護したあの少年を思い浮かべる。先程のベクターの性奴隷という言葉が、死刑宣告のように聞こえた。

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