九十九遊馬の眠れない夜



「ベクター!」

 アリトが窓の外の男を呼んだ。彼は鴉のような黒い翼を広げ、こちらに向かって飛んだ。
 口がないが、眼が至極楽しそうに歪められている。まるで、ショーか何かを見ているように。

「じゃんじゃじゃーん!俺、ベクター!いい恰好だぜ!遊〜馬ぁ!」

 初対面の男に自分の姿を見られて嗤われ、遊馬はまた羞恥で顔を染める。

「遅かったじゃないか。何をしていたんだ」

「へっ…高みの見物よぉ。見てて面白かったぜぇ?遊馬君のオナニーショー!」

「みっ……!見せてなんかっ…!」

「何言ってんだ。こぉんな窓おっぴろげて恥ずかし〜い恰好しちゃって!外から丸見えだったぜ!俺以外にも、見られてたかも知れねぇなぁ?」

 ベクターは遊馬の羞恥を煽るように大げさに言ってみせた。
 本当はスフィアフィールドで音だけではなく視界もシャットダウンされているが、遊馬はそれを知らない。またそらしか見えない窓から誰が見るのだという、常識を外れた考えを正常に戻すことが今の遊馬にはできなかった。

 見られた……見られた…?誰かに……

 その恐怖だけが遊馬の頭を占め、ぐるぐると回る。ドクドクと心臓が壊れたように鼓動する。

「少し度が過ぎないか?ベクター」

「何甘っちょろいこと言ってんだよドルベ。コイツの股間、見てみろよ。こぉんだけ煽られて、ギンッギンだぜ!」

 ベクターに刺激され、気づいた。遊馬の息子は二人に刺激されていたとはいえ、これだけの辱めを受けてその硬さを失っていなかった。それどころか、若干だが硬度を増していたのだ。

「人間なんてそんなモンよ。ドMの変態だらけだ。羞恥心をちょぉっと刺激してやればこうやって喜ぶんだからなぁ」

「ちがっ……俺は、俺は変態なんかじゃっ…!」

「そんな顔で睨まれても怖くねぇぜ。じゃぁてめぇのフル勃起したそれは何だよ?アナルほじくられてチンポオナホで吸われて、俺にそれを見られて喜んでる証拠じゃねぇか。なぁ、遊馬。素直になれよ?」

 涙に濡れた瞳でベクターを睨む遊馬の顎を捉え、上に向かせた。

「気持ちいいですって言ってみろよ。おおきな声で、なぁ?そおしたらもっと気持ち良〜くなるぜ?」

 ベクターが瞳を光らせた。遊馬はその光を浴びると、頭がぐらりと揺れた。遊馬の中に存在する本能が揺り起こされる。
 ……そう、事実なのだ。恥ずかしいのが気持ちいい、見られて感じている…それを、遊馬自身が否定しているだけ。遊馬が、認めていないだけ。
 オナニーは自分のためにするものなのに、誰に遠慮する必要があるのだろうか。
 遊馬はおずおずと涙を流しながら口を開いた。

「気持ち、い……れすぅっ…!あぁんっ……おれ、俺っ…ベクターにっ…見られて……気持ちいぃっ……」

「よくできました〜!そんな変態な遊馬君に、よかれと思ってぇ!とぉっておきのものを持ってきたぜ!じゃんじゃじゃぁ〜ん!」

 ベクターが光を集めると、また何かの形が浮き上がる。それは大きな……鏡だった。月光を反射した鏡に、自分のあられのない姿が映る。遊馬は咄嗟に自由の利かない身を捩ろうとした。

「やっ……!」

「逃げようとしてもぉ、だぁ〜め!ホラ遊馬ぁ!自分が今どうなってるか言ってみろ」

「あ……ひぃっ!…ぁっ……あ、おれ、みざ、…ミザエル、にっ…!チンポ、オナホでっ…こす、こすられて、…メラグに…おしりっ……ぁうぅ…ほじられてっ……はずかしぃ、かっこぉ……してるっ…!」

「あっ、遊馬。そんなにお尻締めちゃだめじゃない」

「だってぇ…っぁ、あん、はぁ、…気持ちいぃっ…メラグのっ…エネマ、おれの…、はぁ、…おれのいいとこ擦って…あぁん、もっとぉ…!」

「ここ、もっと?」

「はぁ、ぅ…あぁ!ああっ…そこ、そこぉっ……!」

「遊馬、こちらはもうガチガチだぞ…お前のドラゴンが、精を放とうとしている」

「みざ、ぁ…みざ、えるっ…!そんな、吸っちゃ…!いっちゃう!おれ、またいっちゃうよぉぉっ!」

「いいぜ、見ててやるからイケよ。淫乱変態の遊馬君。お前も自分のイク姿、よぉ〜く見とくんだぜ?」

 ベクターの声とミザエル、メラグの声に導かれて遊馬は高みへ上り詰めた。
 羞恥心の扉を開け、心の声をそのまま声に出す。何も隔てのないオナニーは遊馬の心の真ん中に至福の快感を与え、彼は精子を搾り取ろうと吸い付くオナホールの中に勢いよく射精をした。鏡に映る、自分の姿をしっかりと焼き付けて。

「どうだ、道具もなかなかいいだろう。いくつか、置き土産として置いて行ってやる。感謝するんだぞ。タキオン・トランスミグレイション!」

 ミザエルは遊馬に使ったエネマグラとオナホールに向けて眼を光らせた。すると、時間を巻き戻したかのように二つの道具は綺麗未使用だった状態に戻った。
 遊馬はただ、すげぇと心の中で感動した。しかし声に出す気力はなかった。喘ぎすぎて喉がガラガラだ。

「相当良かったようだな。では、最後の仕上げといくか、ドルベ」

「ああ、ナッシュ。頼む」

 ナッシュと呼ばれた紫の男は遊馬にもう一度、リターン・フロム・セイジをかけた。遊馬は再び性欲を回復していく。

「最後は私だ…。オナニストの白き名器、ドルベ!」

「さいご…けほっ!…さいご、って、なんだ…?」

「男の最終にして究極のリビドー…それは、セックス!だ!」

 男子中学生にしては、知っているけど恥ずかしい言葉。
 妙に小気味のいいドルベの発音に、遊馬は思わず顔を赤らめた。

「お…俺だってそれくらい知ってるよ…。け、けどそれはオナニーとは別物だろ?」

「いい質問だ。遊馬…。しかし、この世にはセックスを疑似体験するオナニーが存在する。それが、“ダッチワイフ”だ」

「そう、ドルベはそのダッチワイフのように、その身をもってオナニーを助ける名器が存在する」

 セックスを疑似体験するオナニー。相手がいないと成り立たない、しかし完全なる一人遊戯…。
 そんな矛盾の存在に遊馬は疑問と同時に新たな好奇心を芽生えさせた。

「来るがいい、遊馬」

 ドルベは遊馬に向けて自らの股を開き、その中心にある割れ目を広げて見せた。男にあるはずのない女性器がある。中からは愛液を思わせるように生成されたローションが零れていた。
 遊馬は初めて見るそれに眼を奪われた。ねーちゃんの裸は幼いころに見たことはあっても、その秘められた部分を目にしたことはなかったのだ。
 ドルベの穴が、その形や色が誘っているように見え、遊馬は本能からゴクリと喉を鳴らした。まだ触っていない息子が痛いほどに張り詰めている。

「お、おう……。こう、か…?」

「そう、だ。君のペニスを…そう、私のヴァギナに入れて…」

 ドキドキと胸を高鳴らせてドルベの股に息子を埋め込んでいく。ずぷずぷと息子が呑みこまれるのと同時に、今まで感じたことのない感覚が遊馬の息子を襲った。

「うわっ…!ぁ、すげぇっ!…ミザエルのオナホも気持ち良かったけどっ…全然、違う…!」

「ヴァギナはペニスに絡みつき、その精を搾り取るために中には無数のヒダが存在する…。遊馬、腰を動かしてみろ」

 ドルベに言われるまま、遊馬は一度入れた息子を引く。動かした瞬間、中のヒダが遊馬に絡みつき、それを引きずるような感覚と快感が遊馬の腰に響いた。どろりと濡れた粘膜の感触も柔らかく、遊馬を包む。

「ヤバいっ…!どっちに…はぁ、動かしてもっ……!気持ちいいっ…!はぁ、…はっ…!」

「君の好きなように動くといい」

 遊馬はドルベの身体を押さえつけ、腰を前後に動かしてヒダに息子を擦りつけ、彼の中を蹂躙した。ヒダと入口が動きに合わせて収縮し、程よく締め付けて気持ちがいい。

「あっ…ぁ、…はぁ、あ、ぁっ…!あ、いく、っ!いく、あぁっ…!」

「動きが早くなってきた…さあ、そのまま出せ」

 彼の尻に自分の股がぶつかる音と空気を含んだ水音が耳に響き、快感が腰に絡みつく。遊馬は息を荒らげながら、ドルベの身体を本能のままに揺さぶった。きゅっと遊馬の精を搾り取ろうと中が収縮し、遊馬はその感覚に身体を震わせてドルベの中に精を放った。

「あ、…ぁ、あっ―――!!!っ…はぁ、また、いっちまったぁ…」

「ん…どうだった…?」

「す…すごかった…!こんな、すごいオナニーがあったなんて…俺、知らなかったぜ…」

「オナニーは奥が深い。こんなもので知った気になるなよ。…あとはお前が自分で見つけ出せ」

「なんか…恥ずかしかった、けど…気持ち良かったぜ…。サンキューな、気持ちいいことたくさん、教えてくれて…」

「フッ…ならば最後に、お前の身体に今まで味わった快感を叩き込んでやろう。“リターン・フロム・セイジ”!」

「うっ、うわぁ!?また…!今度は、お前、がっ…?」

「俺はオナニーを制する者、ナッシュだ!いくぞ遊馬!」

 遊馬はその後、精根尽き果てるまでナッシュに今までの快感を復習され、その身体に叩き込まれたのだった。
 そして明け方近く、彼は半ば意識を失うような形で夢の世界へと堕ちた。



「……ま、遊馬!」

「っは…!?」

 翌朝、遊馬は随分と日が高くなってから眼を覚ました。アストラルが遊馬の顔を、微生物を観察する科学者のような顔つきで覗き込んでいた。

「ぁ……おはよう、アストラル…」

「君はいつもよく眠る方だが、今日はいつにもましてよく眠っていたな。疲れていたのか?明里が一度起こしに来たのだが、気づかなかったのか」

「ん〜、全然……。そういえば、いつもよりよく眠れたような…。なんかよく、覚えてねぇや」

 あの昨日の出来事は、現実だったのか、それとも遊馬が見た淫夢だったのか。その真偽は本人にもわからないことだった。
 だが、一つだけ、はっきりとしていることはあった。

(俺……もう普通のオナニーできねぇかも……)


 九十九遊馬、13歳―――
 中学1年生にして新たな世界を垣間見た彼は、更なる性の目覚めへと至るのだった。



ーーーー
ネタの始まりは「唸る右手が精子を飛ばす!アリト!」の語呂が良すぎたのが発端です。
ホントに沸き上がるように七皇揃いました。(ベクターは投げました)
何でこんな下ネタばっかり妄想力が逞しいのか自分でも不思議です。

ちなみに想像つくと思いますが、セイジ=賢者で、ナッシュの技はあれ要するに賢者タイムから戻ってくるという意味です。

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